巧妙にセットで子宮頸がんワクチン接種義務化
予防という名の人体実験
「子宮頸がんワクチン被害」を追う(10)
6月14日に開かれた厚生労働省の副反応検討部会(桃井眞里子座長)では、接種の積極的勧奨の一時中止の方法をめぐり、さまざまな視点で意見が交わされた。
なかでも、積極的勧奨の一時中止に賛成した岡部信彦川崎市健康安全研究所長は、子宮頸がんワクチンの接種を、現在のA類疾病から、インフルエンザが属しているB類疾病に移すことでの対応策を探った。
なぜなら、A類はジフテリアやポリオ(小児麻痺〈まひ〉)、 麻疹(はしか)などと同じく、伝染性が強い疾病。従って、公衆衛生上、積極的に接種を勧奨して接種率を十分に上げ、その伝染を防ぐことが主眼となる。
A類疾病は本人に努力義務があり、地方自治体が接種の勧奨を行うが、B類疾病は、個人に予防の重点があり、努力義務はなく、接種勧奨もない。
子宮頸がんの原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)は、性行為によって移るので、個人の性行動によって伝染の可否が決まってくる。放っておけば、空気感染するようなものではない。
いわんや、定期接種の対象となっているのは、本来、性行為など慎むべき小学校6年生から高校1年生までの女子生徒たちである。
桃井座長が、検討部会の席で厚労省の担当課長に問うたところ、「A類のままで積極的勧奨を差し控えるのは可能」との答えだった。
その結果、A類に残したまま、接種の積極的勧奨はしないという比較的妥当な選択肢が見つけ出された。B類に移されると、接種も無償でなくなってくる。
4月から施行となった改正予防接種法により、予防接種の対象疾病の分類が、それまでの1類、2類からA類、B類と変わった。
子宮頸がんとともに、乳児に伝染するHib感染症(ヒブ)と小児肺炎球菌感染症をA類に加えることが、改正の主な中身である。
小児の肺炎球菌感染症は重症化することが多い。とりわけ2歳以下の子供は肺炎球菌に対する免疫がほとんどなく、脳を包む膜にこの菌がつく細菌性髄膜炎や 菌血(きんけつ)症、敗血症などを引き起こす。
今回、A類に加えられた二つの感染症は、子宮頸がんの原因とされるHPVと根本的に性格が違う。
このため、医師の間でも「子宮頸がんワクチンを定期接種として位置付けるのは不適当だ」と指摘する声は少なくない。
しかし、2010年10月、予防接種部会意見書はヒブ、小児用肺炎球菌、子宮頸がんの各ワクチンを定期接種化する方向で急いで検討するよう要請。
それを受け、12年3月末まで、子宮頸がんワクチン接種緊急促進事業が進められ、東京・杉並区のように、任意接種時期でありながら「中学入学お祝いワクチン」などとして無料接種を行う地方自治体が出てきた。
他の二つのワクチンとセットで、異質な子宮頸がんワクチンの定期接種化が急ピッチで行われてきた。
だが、副反応検討部会でこれほどの副反応が出る一因として、アジュバント(免疫促進剤)に目が向けられていないのが不自然である。
(山本 彰)