子宮頸がんワクチンへの質問はぐらかす専門家会議
予防という名の人体実験
「子宮頸がんワクチン被害」を追う(7)
子宮頸(けい)がんワクチン接種の積極的勧奨再開に向け、活発に動いている今野良自治医大さいたま医療センター教授(53)。
自治医大を卒業後、東北大学医学部に勤務、2008年から、「子宮頸がん征圧をめざす専門家会議」の実行委員長を務めている。
4月末、今野医師にインタビュー。大宮駅からタクシーで10分ほどで広い敷地内にある堂々とした同医療センターが姿を現したが、意外にも今野教授の医局の事務室は狭く、女性秘書も机を構え、書籍や書類がそこかしこに積み上げられていた。
インタビューに入る前、本紙で一面トップで掲載した「子宮頸がんワクチン―リスクが予防効果の4倍以上」の紙面(4月22日付)を思い切って眼前に広げた。
その記事に随分驚いた様子だったが、その数字が間違っているとは指摘しなかった。
この記事の根拠となる数値は、参議院厚生労働委員会(3月28日)ではたともこ議員(生活の党)と矢島鉄也厚労省健康局長との質疑で明らかにされたもの。 それによれば、予防効果が10万人に7人に対して、重篤副反応リスクの方は10万人に約28人となる。
しかし、今野教授は、インタビューでこの数字について議論するのを避け、逆に「子宮頸がんにかかっている20代の女性に見つかるヒトパピローマウイルス(HPV)の9割が16、18型だ」などという数字を強調した。同ワクチンは16、18型にだけ有効だ。
同専門家会議は5月22日、都内で「ワクチンについてよく知ろう」という公開セミナーを開催。
このセミナーでも「20代の女性のがんの死亡原因で3番目に多いのが子宮頸がん」(上坊敏子・社会保険相模野病院婦人科腫瘍センター長)などとワクチン推進に都合のよい数字が持ち出されていた。
子宮頸がんの年間死亡者数は約2700人で、そのうち20代の死亡者は24人(平成21年)。他のがんでの死亡者数も20代は極めて少ない。少ない人数同士で、互いに比較したほとんど意味のない順位である。
それに、子宮頸がんワクチンを接種するのは、基本的に10代前半の、性行為でうつるHPVにまだ感染していない子供たちである。
子宮頸がんを罹患(りかん)している20代の女性に発見されるHPVの割合がどうであろうと、直接関係ないことである。
講義への質問は、紙に書いて提出し、主催者側が選んで回答する形式。その間、ワクチンがいかに素晴らしいかを称賛する青年男女の話で時間はどんどん経過した。
終了時間を15分延長していたが、取り上げられた質問は、子宮頸がんワクチンに関してより、ある自治体が他のワクチンをたくさん予算付けして導入しようとしている、といった手柄話が先行。
肝心な子宮頸がんワクチンへの質問は、司会の今野医師が、大ざっぱな答えで処理していた。会場には、専門家会議を支援する人たちが来て、サクラで質問をしているとの印象は否めなかった。専門家会議という割には、なぜ、堂々と質問を受け、正面から答えようとしないのか、疑問が残った。
(山本 彰)