対韓輸出一部許可、政府は厳正な審査継続を


 政府は輸出管理を厳格化した韓国向け半導体材料の3品目の一部契約について輸出を許可した。許可が出たのは先月4日の厳格後初めてとなる。

 ただ、韓国の貿易管理体制の不備が解消されたとは言えず、政府は引き続き厳正な審査を行う必要がある。

安保上の懸念なしと確認

 世耕弘成経済産業相は、個別の輸出許可について「厳正な審査を経て、安全保障上の懸念がない取引だと確認できた最初の案件について既に付与している」と述べた。

 韓国政府によると、許可を受けた契約は半導体基板に塗るレジスト(感光材)だ。日本政府は安保上の懸念を理由に、レジストのほか、フッ化水素とフッ化ポリイミドについて、韓国に輸出する企業が個別の輸出契約ごとに許可を申請するよう輸出管理を厳格化していた。

 個別審査は原則90日以内とされ、最初の許可決定は1カ月程度で出たことになる。韓国からは輸出厳格化について禁輸措置との批判もあるようだが、審査を通れば輸出できることが示されたと言える。

 ただ、韓国の貿易管理体制への懸念が払拭(ふっしょく)されたわけではない。世耕経産相が、半導体3品目以外にも不適切事例が見つかれば「個別許可申請の対象に追加する」と表明したのは当然だ。

 政府は半導体3品目の対韓輸出を厳格化したほか、貿易管理上の優遇措置の適用対象国グループから韓国を除外する政令を公布した。今月28日の施行後は、軍事転用可能な工作機械や先端素材などの韓国向け輸出は、原則個別の許可が必要となる。

 アジアで優遇措置を受けているのは韓国だけで、日本は優遇をやめ、通常手続きに戻すにすぎない。ところが韓国は猛反発し、文在寅大統領は除外について「極めて無謀な決定だ」と非難した。これでは日本との対立が激化するだけだ。信頼回復には、韓国が輸出管理上の不備の是正を急がなければならない。

 元徴用工問題でも日本への誠意ある対応が求められる。徴用工訴訟で、韓国最高裁は韓国政府の従来見解を覆し、1965年の日韓請求権協定で「解決済み」とされた個人の請求権を認定。日本政府は協定に基づく2国間協議、さらに第三国を交えた仲裁を求めたが、韓国政府は期限までに回答しなかった。

 安倍晋三首相は、韓国に対して「国と国との関係の根本に関わる約束をまずはきちんと守ってほしい」と苦言を呈し、韓国が協定を順守しない限り、文氏との会談には応じない姿勢を鮮明にした。文氏は自らの対日姿勢が日韓関係を悪化させていることを自覚すべきだ。

日米韓の防衛協力強化を

 日韓の対立が深まる中、韓国は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄も示唆している。

 岩屋毅防衛相は、来日したエスパー米国防長官との会談で、中国や北朝鮮の動向を念頭に、地域の平和と安定のためには日米韓3カ国の連携が重要との認識で一致し、日韓のGSOMIAについても継続すべきだとの立場を共有した。日米韓の防衛協力強化に向け、韓国は冷静に対応する必要がある。