参院選で議席を獲得した「れいわ」と「N国」の“なぞ”に迫った文春と新潮

◆ただ者でない山本氏

 今回の参院選で分からなかったのが、れいわ新選組の山本太郎だ。その人の行動原理と頭の中だ。単なる“左翼かぶれのタレント上がり”だと思っていたら、とんでもない。政治家として無視できない力を感じさせる。

 「なぜここまで、れいわはブームになったのか」の疑問に答えようとしたのが週刊文春(8月1日号)。「岸田『ポスト安倍』を潰した菅“死んだふり作戦”」の記事で、各党の話題を並べて、最後の方にれいわ新選組を取り上げている。

 山本太郎は誰のアドバイスを受けているのだろうか。誰から思想的影響を受けているのか。同誌が「ブレーンの一人」として挙げたのが「市民の党代表の斉藤まさし」である。「菅直人元首相をはじめ、多くの選挙に携わってきた新左翼の活動家」だ。

 その斉藤が山本を評して、「田中角栄の再来という要素もあるかなと思うようになった」と語っている。確かに、言っていることはハチャメチャのように聞こえるが、聴衆を引き付ける話術、政権批判の鋭さ、奇抜な選挙戦術、等々、山本には左翼であることを除けば、田中角栄に一脈通じるものがあるかもしれない。

 「経済ブレーン」には「マルクス経済学者で反緊縮論者の松尾匡立命館大教授に傾倒していました。最近の主張は、経済学者の植草一秀氏に近い」と「山本氏周辺」は同誌に語っている。植草といえば、「女子高生のスカートの中を手鏡で覗き有罪判決を受けた」人物で、こんなところで名前が上がったのは奇異な感じがするが。

 山本は少し輪郭が分かりかけてきた。彼と並んで気になっていたのが、「NHKから国民を守る党」だ。代表の立花孝志が当選し、得票基準もクリアして政党要件を満たした。元NHK職員で、その元職場を「ぶっ壊す」とNHKで政見放送をした。略称が「N国」、どっちも冗談がきつい。

 立花は「無所属議員たちをN国に引き入れようとしている」のだという。挙がっているのが丸山穂高、渡辺喜美、中山成彬、青山雅幸。ガラクタ感に満ちている。「安倍政権と対峙できる強い野党勢力を作るためのステップだと目をつぶっていただきたい」と立花は同誌に語ったが、どこまで本気なのか。

 ともかく岸田文雄がポスト安倍から脱落した解説より、こっちの“なぞ”が解けた方がよほどおもしろかった。

◆「れいわ」政党化成功

 が、もっと書き込んでいたのが週刊新潮(8月1日号)だ。山本太郎ならば1位当選確実で、自民が1議席減らしていた東京選挙区にあえて出ず、「比例に回ることで全国の票を集め、発足したての『れいわ』を政党化することに成功した」(政治部記者)と。こういう分析の方が分かるし、山本の“すごさ”が伝わる。その山本は次の衆院選に出るという。当選するのだろう。

 そしてN国。動画共有サイトなどを利用して選挙資金を集め、ネットで集めた候補者を「みなさん国会議員になってはならないような方々」と切り捨て、単なる「比例票を集めるための“手段”」だと割り切る。なってはならないのは「あなた」だと同誌も言うが、その通りだ。

 これだけふざけた立花に対して、同誌は“NHKを壊す”という「ワンイシューだけを議論していたら国会は成り立たない。暮らしに直結する税や社会保障、外交から防衛まで、様々な政策を語れることが求められるはず……」と説教する。新潮よ、本気で言っているのか。語る相手を間違っている。

◆憲法改正の記事なし

 最後に衆院解散の時期を各誌はどう報じているのだろう。新潮は「政治部記者」の分析で、「早くても今年の秋から年末、遅ければ来年の五輪前後が有力視」されていると見る。一方、文春は飯島勲内閣参与が連載コラムで、「二〇年夏の東京五輪前に、都知事選挙と衆院選のダブル選挙だと見るけどね。それしかないよ」と自信たっぷりに言い切った。

 両誌共に「さあこれから憲法改正論議を進めよう」という記事がなかったのが残念だ。(敬称略)

(岩崎 哲)