与党改選過半数、改憲多数派形成へ論議深めよ


 第25回参院選が投開票され、与党の自民、公明両党が改選過半数を獲得した。6年半余りにわたる安倍晋三首相の政権運営や重要諸政策が国民から支持されたものだ。ただ、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席は、自民、公明、維新の3党では届かなかった。しかし、それ以外にも改憲を真剣に考えている候補者が当選している。安倍政治の集大成の意味でも、首相は多数派形成に向けて議論を深めていくべきだ。

二者択一の訴えが浸透

 今回の選挙で安倍首相は改憲論議の必要性を前面に押し出した。「未来へ責任を持って議論する政党か、議論を拒否する政党かを選ぶ選挙だ」との二者択一の訴えが有権者に浸透した。

 首相が目標とする2020年の改正憲法施行のためには、今秋の臨時国会で議論を深化させ国民投票法改正案の成立と自民党改憲案の国会提示にこぎ着けたいところだ。そして、国会発議に必要な3分の2以上の議席を確保するには、自民、公明、維新などの改憲勢力の賛成とともに、少しでも多くの賛成を野党側から得なければならない。

 そこで注目されているのが、国民民主党内で改憲に前向きな議員をどう結集できるのかだ。首相は「自衛隊を明記」することを強調している。一方、国民民主党は選挙公約で「国が自衛権を行使できる限界を曖昧にしたまま、憲法9条に自衛隊を明記すべきでない」とした。「自衛権の行使の限界」を草案にどう書き込むかが知恵の出しどころとなろう。公明党も9条の「加憲」案を提示して議論に積極的に参加することを求めたい。

 一方、憲法審査会を事実上、ストップさせてきた立憲民主党は、選挙の結果を受けて審査会に復帰すべきである。「反安倍」だけで野党が結束しても、一時的に勢力の伸長はあってもその後の展望はなく、政権交代可能な本格政党にはなれないのだ。審査会で堂々と見解表明をしてもらいたい。

 イラン情勢の緊迫化を受け、米国がホルムズ海峡などを警備する有志連合の結成を提唱し、日本の対応が問われている。海上交通路の安全確保は政府が担うべきだが、自衛隊をどう活用するのか。現行法で対応できなければ特別措置法が必要なのか早急に結論を出さねばなるまい。日本は同盟国米国とともにイランとも関係が深いだけに難しい選択を迫られている。

 元徴用工問題で悪化した日韓関係や米国との貿易協定交渉、北朝鮮による核や拉致、ロシアとの北方領土問題などの難題も控えている。米中貿易摩擦を背景とした世界経済の減速が懸念される中、アベノミクスの先行きにも暗雲が漂っている。

 与党は10月に消費税を10%に引き上げることを公約したが、内需がさらに冷え込み景気を悪化させないか。首相は「ちゅうちょなく機動的かつ万全の対策を講じる」と追加経済対策の可能性に言及しているが、慎重な判断を求めたい。

与野党超え取り組め

 先の衆院選で「国難」とした少子化への対策も待ったなしだ。国会は与野党の枠を超えて、緊急課題の解決に向けて真摯(しんし)に取り組んでもらいたい。