令和の国づくりに拍車を
政治部長 武田滋樹
令和の時代初の国政選挙、第25回参院選は、増税を掲げた自民・公明の与党が改選過半数を超え、両党に憲法改正に前向きな日本維新の会を加えた、いわゆる改憲勢力も非改選を含め参院で改憲発議に必要な3分の2には届かなかったが、それに迫る議席は確保した。
有権者は6年半にわたる安倍晋三政権の実績に基づいて「政治の安定」を訴えた与党に強い支持を与える一方で、安倍首相が前面に立って訴えた「早期の憲法改正」に対しては課題を与えた。安倍首相は、このバランス感覚が働いた結果を真摯(しんし)に受け止め、21年秋までの総裁任期の間、謙虚に自信をもって令和の国づくりを進めてもらいたい。
日本が現在、直面している課題は既に平成の始まりには顕在化していた。少子高齢化の到来は戦後ベビーブーマー世代(団塊の世代)の孫の世代に第3次ベビーブームが起こらず決定的となり、戦後の右肩上がりの経済はバブルがはじけて長期停滞に陥った。東西冷戦後の湾岸戦争で130億㌦もの資金援助をしても人的貢献なくしては評価を受けられない国際社会の現実を実感し、冷戦期にはタブー視されていた国際基準と懸け離れた憲法を改正しようという論議が巻き起こった。
しかし、日本の政治は平成30年余りの間に、どの課題に対しても抜本的な解決策を示せなかった。かえって、急進展した少子高齢化、人口減少社会に対応する経済・社会体制をどうするのか。また中国の経済・軍事的な膨張と北朝鮮の核・ミサイル開発などで厳しさを増す安保環境、相次ぐ大規模な自然災害などに国としてどう対応していくのか。いずれの問題も待ったなしの状態に追い込まれた。
令和の国づくりはそのような現実から出発し、百年を見通す長期的な視点で進めなければならない。その第一歩でありグランドデザインとなるべきものが、憲法改正だ。首相は16年参院選後の会見で、憲法改正について、「いかに、わが党の案をベースにしながら(衆参各院の)3分の2を構築していくか。それがまさに政治の技術」だと述べた。参院で3分の2を割り込んだ状況はさらに高度な政治の技術を必要としている。
一方、立憲民主は議席を増やして参院でも野党第1党の立場を固めた。かつての社会党のように改憲阻止だけの党にとどまるか、「責任ある政党」として令和の国づくりに関与する党になるかの分水嶺に立ったと言える。