安倍政権とのスタンスをそのまま反映した各紙のG20サミット評価

◆“揚げ足取り”の朝日

 「まずは米中双方が納得できる自由貿易の原則を確認し、それに沿うよう促したのは現実的アプローチといえる」(産経6月30日付主張)。

 「世界経済の持続的な成長には、各国が協調して自由貿易の推進などに取り組むことが不可欠だ。その重要性を確認した意義は小さくない」(読売7月1日付社説)。

 安倍晋三首相が議長として仕切った日本初の主要20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が6月28、29の両日、2日間の協議を終え、「自由・公正・無差別な貿易、投資環境の実現に務める」ことや、デジタル経済のルール作りの枠組み「大阪トラック」の開始などを盛り込んだ首脳宣言を採択して閉幕した。

 冒頭はG20サミットの各紙総括の一部であるが、これが朝日(30日付社説)となると、昨年に続いて首脳宣言に2008年のG20サミット発足以来、明記されてきた「反保護主義」への言及が見送られたことに「会議の成功を優先し、難しいテーマから逃げた」と噛(か)みついた。それだけではない。例年、G20サミットが主要7カ国(G7)サミットの後に開かれてきた慣例を破り、今回はG7前に開かれたのは「参院選の直前に『外交の安倍』を世論にアピールする狙い」とする見方を紹介。社説を「いったい、何のための外交なのか。長期的な戦略より政権維持の思惑が優先されるなら、その行き着く先は危うい」と結ぶ始末である。

 ここまで、“安倍嫌い”を徹底させた揚げ足取り論調には唖然(あぜん)とさせられるが、お陰で見えてきたこともある。今回のG20サミットを論ずる各紙論調は、日頃の安倍政権とのスタンスをそのまま反映させて展開していることだ。

◆米中双方批判の毎日

 首脳宣言で「反保護主義」に言及しなかったことについては、代わって自由貿易の基本的原則が盛り込まれたことを産経、読売が評価したのに対し、他紙は批判した。だが、その批判の矛先が「米国第一」を譲らないトランプ米大統領だけに向ける朝日に対して、毎日(30日付社説)は「中国の国家資本主義も国際的に異質な体制だ」と批判、中国にも補助金依存の体質からの脱却を求めるなど米中双方に大国としての責任を突き付けるなど、一方的な朝日との違いを示した。

 日経(30日付社説)も「『新冷戦』とも呼ばれる米国と中国の覇権争いに翻弄され、世界経済の安定を担うG20の責任を果たせなかったのではないか」と断罪。さらに具体的に、G20が世界貿易機関(WTO)改革を打ち出したことを評価する中でも「米国の一方的な保護貿易や中国の不透明な産業政策をただす」ことの必要を訴えるなど、米中を公正な尺度で批判している。

 一方、小紙(30日付社説)は「自由貿易を推進するには、世界第2の経済大国でありながら知的財産権の侵害や政府による補助金など『不公正な貿易慣行』を続けている中国に改革を強く促す必要」を訴えた。産経も、米中対立の根本は中国の構造問題だとする視点からWTO改革の課題に言及し「市場経済の国際ルールを軽視し、不公正な貿易慣行を改めようとしない中国などの振る舞いに対応できていない」ことに米国の不信があると指摘したのである。

◆後追いで評価の朝日

 “安倍憎し”に狂奔する朝日の論調が極めて偏ったものであることが浮き彫りになった形であり「まずい」と思ったのか、朝日は翌日(7月1日付社説)もG20をテーマに論じた。前日のタイトル「安倍外交の限界見えた」に対し、この日は「秩序の形成に貢献を」。

 ここでは一転して「成果がなかったわけではない」として、首脳宣言が「海に流出するプラスチックごみを『50年までにゼロにする』との目標」やWTO改革の必要性を「共有した」ことや、巨大IT企業への課税ルールの大筋合意に向けた取り組み強化などの明記を挙げた。いずれも各紙が評価したことの後追いにすぎないものである。

(堀本和博)