G20サミット、中国に構造改革を強く促せ


 大阪市で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境の実現に努める」と明記した首脳宣言を採択して閉幕した。

 米国と中国の貿易摩擦が長期化する中、世界経済の下振れリスクは高まっている。自由貿易を推進するには、世界第2の経済大国でありながら知的財産権の侵害や政府による補助金など「不公正な貿易慣行」を続けている中国に改革を強く促す必要がある。

世界経済下振れの恐れ

 G20サミットに合わせて行われた米中首脳会談では、米国が中国からの輸入品ほぼすべてに追加関税を拡大する制裁措置を見送る一方、貿易交渉を再開することで合意。トランプ米大統領は中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への制裁を緩和する意向も表明した。

 貿易摩擦の一層の激化はとりあえず避けられたが、対立が解消したわけではない。各国には世界経済下振れへの警戒が引き続き求められる。

 知財権侵害を理由とする米国の対中制裁関税発動は強引なやり方で、決して褒められたものではない。ただ、中国による外国企業への技術移転強要などは日本や欧州の企業も悩まされてきた問題だ。

 こうした慣行を続ければ市場をゆがめることにもなる。G20各国は中国に構造改革を進めるよう働き掛けるべきだ。

 本来であれば、このような問題は世界貿易機関(WTO)協定に基づいて対処することが望ましい。ただ、現在の不公正な状況に対してWTOが十分に機能しているとは言えない。

 首脳宣言がWTO改革の必要性に触れたことは妥当だ。WTOのルールを実効性あるものに改善するよう加盟国に促していかなければならない。

 このほか首脳宣言では、海に流出するプラスチックごみを2050年までにゼロにする日本提案の目標「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有したと明記した。海への流出量は年間約800万㌧と言われ、生態系や人体に悪影響を及ぼすことが懸念される。

 流出するプラごみの大半は、中国やインドネシアなどアジアの途上国から排出されている。日本は、ごみの分別や再利用に関する技術提供のほか、ポイ捨てをなくすため、モラル向上への支援も進める必要がある。

 日本は今回、WTOの枠組みでデータ流通の国際ルールを策定する「大阪トラック」を始動させると宣言した。日米や欧州連合(EU)、中国など78の有志国・地域は、来年6月のWTO閣僚会合までに「実質的な進展」を目指す。

 デジタル化が急速に進行する中、個人情報や知財権を保護しつつ、データがスムーズに国境を超えて流通するためのルールづくりが求められている。日本はこの分野でも大きく貢献していくべきだ。

日本の存在感高めたい

 日本がG20サミットで議長国を務めたのは今回が初めてだ。今後も世界の安定と繁栄のために外交努力を重ね、国際社会における日本の存在感をさらに高めていきたい。