通常国会閉幕、審議欠いた憲法、外交・安保
150日の会期中に平成から令和への御代替わりを経た通常国会が閉幕した。本年度予算の成立後、新元号発表、統一地方選前半・後半戦、天皇陛下御退位、新天皇陛下御即位、10日に及ぶ大型連休、改元して初の国賓となるトランプ米大統領の訪日など特別な行事が続いたこともあるが、国会論戦は低調のまま与野党は参院選に向かうことになる。
ほとんど開かれぬ審査会
改元の歴史的な節目と重なり、与野党が政治休戦を余儀なくされる期間が4月、5月と続いたことは安倍内閣と与党に有利に働いたと言える。発足して7年目の長期政権となる安倍内閣に緊張感をもたらし、マスコミの関心も政治以上に御代替わりに集中した。
その中で終盤に注目されたのが、金融庁の有識者会議がまとめた「高齢社会報告書」で公的年金以外に老後2000万円の資産が必要になるとしたことに関連する社会保障問題だ。25日に否決された内閣不信任決議案で野党側は冒頭にこの問題を取り上げ、参院選の争点にする構えだ。
安倍晋三首相は国会閉幕を受けた記者会見で、少子高齢化時代に社会保障改革は避けられないと指摘し、所得の少ない高齢者の安心を確保する一方で「負担を増やすことなく給付を増やすことはできない。年金を増やす打ち出の小づちはない」と強調した。与野党とも財源を踏まえた責任ある改革案を示していく必要がある。
また、首相は「令和の日本がどのような国を目指すのか、その理想を語るものは憲法だ」と訴え、この1年の間に国会の憲法審査会が「衆議院で2時間余り、参議院ではたった3分しか開かれていない」状況について「国民に問いたい」と述べ、選挙の争点として掲げる決意を表明した。
閉幕した通常国会では国民投票法改正案の成立を見送り、昨年から3国会続けて継続審議となっている。その最大の理由は野党の姿勢にあり、参院選で立憲民主党、国民民主党が共産党や社民党と野党共闘を組むために改憲に反対しているためだ。
国会では時代の変化とともに数多くの法律を改正してきている。国の基本法である憲法の条文も時代とともに見直されるべきで、必要な改正案を示して国民に賛否を問うのは国会の最も重要な役目の一つだ。
それにもかかわらず、日頃は「国民主権主義」を説きながら国民に改憲を問う道を閉ざす野党の姿勢は、決して国民に受け入れられているわけではなく、支持率にもほとんど結び付いていない。憲法審査会で審議が行われない国会は、これで最後にしたい。
シーレーン守る議論を
首相のイラン訪問の時期に石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡で日本の海運会社が運航するタンカーが攻撃される事態にも、国会での外交・安全保障論議は低調だった。
トランプ氏から危険な旅をしている自国の船を守れという発言が飛び出す前に、国会でわが国のシーレーン(海上交通路)を守る真剣な議論が与野党の間で起こるべきである。