海洋プラごみ対策、途上国も参加の枠組み提案へ

大阪G20サミット焦点(下)

 「問題の解決には、世界全体での取り組みが不可欠。世界全体で目指すべきビジョンを共有しながら、その実現に向けて、各国が実効性のある具体的な対策を実行に移していくことが求められる」

 大阪G20サミットの重要テーマの一つである海洋プラスチックごみ対策について安倍晋三首相は、先月31日の関係閣僚会議でこのように述べ、「世界全体の取り組みを力強く牽引(けんいん)していく」と決意を新たにした。

 世界の陸域で発生したプラスチックごみのうち、年間約800万㌧が海に流出しているといわれている。その大半は中国やインドネシア、フィリピンなどアジアの途上国から排出され、海に残存するプラごみは年々増加の一途をたどる。プラスチックは有害な化学物質を吸着する性質があり、魚などがのみ込んで海洋生態系を崩すだけでなく人体へ悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。

 海洋プラごみ対策について、G20では2017年のドイツ・ハンブルクサミットで初めて首脳宣言で取り上げられ、廃棄物管理や調査などを盛り込んだ行動計画の立ち上げに合意。昨年のカナダ先進7カ国(G7)サミットでは、達成期限付きの数値目標を定めた「海洋プラスチック憲章」が日本と米国を除き承認された。日本は、先進国だけでなく途上国も含めた取り組みを大阪G20で提案する意向を示し、署名を見送った。

 海洋プラごみ削減に向けた先進国の取り組みも一枚岩ではない。欧州連合(EU)は、2021年から使い捨てプラ製品の流通を禁止。米国は廃棄物管理の徹底によりごみの海洋流出防止に力点を置き、流通規制には否定的だ。一方で途上国の一部には、いまだに廃棄物管理のインフラが導入されず、あらゆる生活ごみが川から海へと流れ出ている地域も。

 こうした状況で、G20議長国である日本は「経済活動を制約する必要はない」とする考えで流出防止策に焦点を当て、途上国も取り組みやすいよう、世界全体で連携した対策を促進できる枠組みを提案する。

 長野県軽井沢町で16日に閉幕したG20エネルギー・環境相会合では、ハンブルクサミットでの行動計画をベースとした廃棄物管理等の自主的な対策の実施を各国に呼び掛け、取り組みを定期的に報告・共有する枠組みの創設が採択された。

 大阪G20では、この合意を首脳会合で確認する。枠組みはあくまでも各国に自主的な対策を求めるもので法的拘束力はないが、実効性を持たせるため、政府は国際条約などの締結につなげたい。また、プラごみ削減に向けた具体的な数値目標の設定まで踏み込めるかどうか、注目が集まる。

 一方、日本は「パリ協定」から離脱を表明している米国を孤立させず、気候変動対策の世界全体での取り組みにどう引き入れるかも焦点だ。また、水素発電や二酸化炭素の回収・貯留など日本の先端技術をアピールし、石炭火力発電から再生可能エネルギーや水素などを利用したクリーンエネルギーへの転換を進めていく方向性を明確にできるかが注目点だ。

 海洋プラごみ対策は、先進国でもEUと米国の意見が対立し、途上国との温度差も顕著に表れる。この緊急の地球規模の課題に対し、安倍首相が議長としてリーダーシップを発揮し、解決に向けた共通のビジョンを世界に示すことができるかどうか手腕が問われる。

(政治部・岸元玲七)