大阪G20サミット 首相は指導力を発揮できるか
日本らしい運営
日本が初の議長国を務める20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が28、29の両日、大阪市で開かれる。米中露はじめ主要国の首脳が一堂に会する中、安倍晋三首相が議長として指導力を発揮し、対立意見を集約して、世界経済の持続的な成長に向けて政策協調を導き出せるかが焦点だ。また、会議と並行し、貿易摩擦の行方を占う米中首脳会談をはじめ活発な首脳外交が展開される。首相は参院選を前に、ここでも外交手腕をアピールしたいところだ。
「世界の状況は厳しい。だからこそ、G20が結束しつつ世界をよりよくしていく方向に進んでいく。そういうメッセージを発信できる会議、結論に向けて議長として責任を果たしたい」
首相は21日夜のインターネット放送で、米中貿易摩擦や米イラン危機などの暗雲が漂う中で開催される今回のG20について、「違いより協調、合意に焦点を当てた、日本ならではの会議にしたい」と抱負を語った。
昨年、アルゼンチンで開かれたG20サミットでは、米国の反対で首脳宣言に「保護主義と闘う」という文言は盛り込まれなかった。今月、福岡市で行われた財務相・中央銀行総裁会議でも、米国への配慮から「反保護主義」の文言は見送っており、今回の首脳宣言でも反保護主義を盛り込むのは困難な状況だ。
そこで首相は「貿易制限措置はどの国の利益にもならない」との立場に立って、米国を取り込みながら自由貿易を後押しする合意を生み出そうと知恵を絞り出している。
力を入れているのが、世界貿易機関(WTO)の改革だ。日本は韓国による福島など8県産の水産物の輸入禁止措置をめぐり、WTO紛争解決手続きに不満を抱いている。最終審に当たる上級委員会が、正当な根拠を示さず韓国側の措置を容認したためだが、米国も中国との貿易摩擦をめぐってWTOの紛争解決制度に不満を募らせている。
今月上旬に茨城県つくば市で開かれたG20貿易・デジタル経済相会合でもWTO改革自体の必要性については一致した。しかし、各国の立場や思惑は異なっており、それを調整して改革の方向性を打ち出すことができるかが焦点だ。
また、世界経済の成長促進のため、デジタル分野におけるルール作りにも力を入れている。首相は1月のダボス会議の演説で、「成長のエンジンはもはやガソリンではなくデジタルデータ」と、「デジタルデータ=20世紀における石油」論を展開し、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の必要性を訴えた。今回の会議では、このためのルール作りの枠組み「大阪トラック」の創設で合意したい考えだ。だが、中国やインドは「自由な流通」よりも国内での厳格な管理に力点を置いており、これをどう取り込むかなど課題は小さくない。
一方、来日する各国首脳との会談も目白押しだ。就任後初の来日となる中国の習近平国家主席とは27日、首脳会談を行う。両国は来春、習氏の国賓待遇での単独来日を目指して折衝を続けており、それに向けて関係改善に弾みをつけたい。
このほか、ロシアのプーチン大統領との会談(29日)では、昨年秋に「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結の交渉を加速させる」と合意して以降、停滞する交渉を進展させたいところだ。元徴用工訴訟などをめぐって関係が悪化する韓国の文在寅大統領との会談については見送られる可能性が濃厚で、首脳間のやりとりは立ち話などにとどまりそうだ。
(政治部・亀井玲那)