米中貿易摩擦の行方、一時的な「休戦」で合意か

大阪G20サミット焦点(中)

 大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議は、各国首脳が一堂に会して議論を交わす「内側」の会議よりも、主会場の「外側」で繰り広げられる2国間の首脳会談の行方に注目が集まっている。その主役は、言うまでもなく米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席である。

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 トランプ政権は対中制裁関税「第3弾」を拡大させた上で、残る中国からの輸入品ほぼすべてに追加関税を課す「第4弾」も準備。中国も報復関税を拡大して対抗するなど、米中の貿易戦争は悪化の一途をたどっている。これが緩和に向かうかどうかが米中首脳会談の最大の焦点だ。

 現時点で予想されるシナリオは三つある。一つ目は急転直下でディール(取引)に至るシナリオだ。米中とも国内からこれ以上の関税の応酬は避けるべきだとの圧力がかかっており、可能性はゼロではない。だが、両国の溝はあまりに深く、現実味は乏しい。

 二つ目は交渉が決裂し、貿易戦争がさらにエスカレートするシナリオだ。その場合、トランプ氏は制裁関税第4弾に踏み切ることが予想される。

 可能性が最も高いのが三つ目のシナリオで、一時的な「休戦」で合意し、再び期限を区切って交渉を加速させることだ。これは、昨年12月のブエノスアイレスでの米中首脳会談と同じパターンである。

 ただ、その場合も、激しいやりとりが交わされるとみられる。「トランプ氏は今回が最後のチャンスだ、失敗すれば、関税を40%まで引き上げる、と言うだろう」。米有力シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマシュー・グッドマン上級副所長は、こう予測する。

 米中の貿易摩擦はもはや、米国の貿易赤字が減れば収束していくという単純な構図ではない。トランプ政権が改めさせようとしているのは、国家資本主義という中国の経済構造だからだ。これは共産党の国家運営に直結する問題だけに中国も簡単には譲歩できない。「休戦」で合意したとしても、実際にどこまで歩み寄れるかは不透明だ。

 米露首脳会談も大きな注目を集める。米国内では議会を中心に反露感情が極めて強いため、トランプ氏がプーチン露大統領に近づこうとすればするほど、逆にロシアへの反感が強まるという複雑な状況にある。このため、首脳会談が米露関係の改善につながるかどうかは読めない。

 それでも、米露間には、2021年に期限が切れる新戦略兵器削減条約(新START)の延長問題のほか、無人機撃墜で米国との緊張が高まるイラン、さらに混乱が続くシリア、ベネズエラなど、話し合うべき重要な懸案事項が山積している。

 米中、米露の首脳会談では、北朝鮮問題も重要な議題となる。習氏がG20直前に訪朝し、北朝鮮への影響力を誇示したのは、北の非核化を目指すトランプ政権に外交カードを示す思惑もあったみられる。

 米中、米露に比べれば注目度は低いが、米国とトルコの首脳会談も大きな意味を持つ。米国はトルコがロシア製の地対空ミサイルS400を導入することに強く反発し、制裁を検討している。トルコのエルドアン大統領の直談判で事態は改善に向かうのか。エルドアン氏は昨年、シリアからの米軍撤退をめぐりトランプ氏を電話会談で説得したが、その“再現”を狙っている。

(編集委員 早川俊行)