衆院補選と地方選、危機感持って難題克服に臨め
夏の参院選の前哨戦となる衆院大阪12区と沖縄3区の両補欠選挙が21日投開票され、いずれも自民の公認候補が敗北した。2012年末の第2次安倍内閣発足以来、自民候補の国政補選敗北は初めて。両選挙区とも特殊な地域事情はあるが、政府・与党がそれに対応できず招いた結果だ。参院選前に御代替わりと共に欧米歴訪やG20など首相の外交日程も立て込んでいるが、行事や外交で得点を稼ぐ安易な姿勢でなく、危機感を持ち正面から難題克服に臨むべきだ。
弔い選挙通じぬ民心離れ
自民党の北川知克元環境副大臣の死去に伴う大阪12区補選は、日本維新の会新人の藤田文武氏が「大阪都構想」を争点とした7日の大阪府知事・市長ダブル選で維新系が自民系に圧勝した余勢を駆って、伯父の「弔い選挙」となる自民新人の北川晋平、無所属元職の樽床伸二、共産系無所属(共産・自由推薦)元職の宮本岳志の3氏を退けた。
大阪ダブル選は、公明との都構想住民投票の日程協議が決裂したことを受けて、松井一郎前府知事と吉村洋文前市長が「死んでも死に切れない」と言って仕掛けた「党の存亡を懸けた」大勝負だった。その熱意と府政・市政の運営実績が府民・市民の心を捉えた。
これに対し自民は「党利党略のダブル選」などと維新を批判しながらも、都構想を凌駕(りょうが)する未来ビジョンを示さないまま、共産まで加勢した「反維新」包囲網で都構想潰(つぶ)しに動いた。時には「敵の敵は味方」となることもあるが、大義がなければ無節操になる。「弔い選挙」が通じないほど大阪の民心が離れた理由を自民は反省すべきだ。
玉城デニー氏の沖縄県知事転身に伴う沖縄3区補選では、米軍普天間飛行場の辺野古移設が争点となり、玉城氏の後継として移設反対を訴え、野党各党の支援を受けた新人の屋良朝博氏が移設容認を鮮明にした自民新人(公明推薦)の島尻安伊子氏との一騎打ちを制した。自民は同区で14年、17年に続き3連敗。
ただ、移設反対派が「オール沖縄」を自称するようになったのは、14年まで自民所属で辺野古移設推進派だった翁長雄志那覇市長(当時)が知事選出馬に当たり一部自民市議と共に移設反対に急旋回して以降だ。根拠もなく「最低でも県外(移設)」と約束した民主党政権が付けた火に、自民自身が分裂して油を注いだわけだ。
基地負担軽減策や開発ビジョンだけでなく、移設の安保上の必要性を正面から説得する努力も必要だ。出口調査で島尻氏支持が多かったのが20代、30代だったことに注目すべきだ。
地方の成り手不足深刻
衆院補選と同じ21日に投開票された第19回統一地方選の後半戦では、政令市以外の市長・市議選、東京都の特別区議選、町村長・議会選の投票率が軒並み過去最低を更新し、市長選で31・4%、町村長選で45・5%、町村議選でも定数の23%以上が無投票当選するなど、地方首長・議員の成り手不足、有権者の投票機会の喪失が拡大した。少子高齢化と人口減少は地方を中心にますます深刻化する。政府・与党は正面から難題に立ち向かうべきだ。