日米2プラス2、日本はサイバー戦能力確立を


 日米両国政府が外務、防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催し、防衛協力の一層の深化を確認した共同文書を発表した。

 北東アジア情勢が緊迫しているにもかかわらず、2プラス2開催は1年8カ月ぶりだった。しかし、宇宙、サイバー絡みでの協力を確認できたことは評価してよい。

 攻撃に安保条約5条適用

 2プラス2には、日本側から河野太郎外相と岩屋毅防衛相、米側からポンペオ国務長官とシャナハン国防長官代行が出席。 共同文書では、日本がサイバー攻撃を受けた際、日米安保条約第5条が適用されることを明記している。中国やロシアを念頭に宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域での防衛協力を優先事項として強化する方針を打ち出した。

 最近は中国やロシアに加え北朝鮮も、サイバー戦能力を向上させている。政府機関、産業界などの重要なインフラや防衛面での指揮統制はむろん、国民生活上の機器もコンピューター制御になっている。このためサイバー攻撃を受ければ、壊滅的打撃を被ることになる。

 ただ忘れてならないのは、安保条約は米国が日本を助ける片務条約だということである。それ故、米国の国力、軍事力が相対的に低下している現在では、その信頼性は低下している。

 日本が攻撃を受けた場合、米側が必ず対応してくれるとは限らない。これは軍事攻撃だけでなく、サイバー攻撃の際でも同様だ。

 今回、わが国の準天頂衛星に米国の宇宙監視センサーを搭載するとの合意は、片務性を若干解消することにはなろう。日本自体がサイバー戦能力を確立することが肝要である。ここで留意すべきは、防衛能力と攻撃能力は表裏一体であり、一方だけの能力、つまり防衛能力だけを保有することはできないという点である。

 サイバー戦は情報戦の一環だが、わが国はこの分野で大きく後れを取ってきた。諸外国のように政府が秘密情報収集機関、防諜(ぼうちょう)機関を保有しておらず、主要国が通信手段の発達を受けて設立した「国家安全保障局」(米国)のような機関もない。

 他国はこれら政府機関でサイバー戦に対応。これを受けて軍内部のサイバー戦対応部隊も強化している。中でも米国は昨年、サイバー軍をインド太平洋軍と同格の統合軍に格上げした。

 米国は英国と協力して行ったイラクのフセイン政権打倒作戦の時に、軍指揮用の通信機能を破壊し、短期間に勝利を得ている。これを受けて、ロシア、中国、北朝鮮はサイバー戦能力を強化した。

 ロシアはウクライナ南部クリミア半島侵攻の際に、衛星通信を遮断して軍や重要インフラにサイバー攻撃を加え、所期の目的を達成している。また、ロシアは2016年米大統領選でサイバー機能を活用し、選挙戦を混乱させる上で成果を挙げた。

 担当情報機関の設立を

 このように見てくると、日本も通信・サイバー分野を担当する情報機関を設立し、自衛隊のサイバー専門部隊を拡充することが不可欠である。