各党代表質問、主権問題で真剣な議論を


 衆院本会議で安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が始まり、立憲民主党の枝野幸男代表、自民党の二階俊博幹事長、国民民主党の玉木雄一郎代表が質問に立った。

 厚生労働省の毎月勤労統計の不正調査のほか、北方領土返還問題で注目される日露平和条約締結交渉、韓国駆逐艦によるわが国の排他的経済水域(EEZ)での海上自衛隊哨戒機に向けた火器管制レーダー照射など国家主権に関わる問題で、真剣な国会論戦を望みたい。

 北方領土交渉で釘を刺す

 勤労統計不正調査問題が今国会の主要な焦点となることは、枝野氏や玉木氏が強い口調で根本匠厚労相を非難し罷免を要求したことで明らかだ。また、二階氏も国民の信頼を揺るがすとして是正を求めた。重要なのは不足給付額の支払い、再発防止、信頼回復だが、両野党代表の罷免要求により、昨年までの森友・加計問題と同じく、閣僚辞任要求で不毛な対決に陥る恐れがある。

 しかし、野党各党も支持率が低迷している。民進党分裂後、10年前に政権交代を実現した民主党の名を再び継いだ両党が、安倍内閣を相手にした論戦で切磋琢磨(せっさたくま)の効果を表すべきだ。

 一方、北方領土の主権問題では野党側の質問は筋が通ったものだ。枝野氏は「北方四島は一度も外国の領土になったことはないと認識している」と述べ、平和条約締結交渉の際にロシア側に主張しているかと質問。また、1993年に日露が発表した東京宣言で4島帰属問題が明記されていると指摘し、北方四島の主権で譲ってはならないと釘(くぎ)を刺した。玉木氏も「北方領土の帰属は日本にあるのか、ロシアにあるのか」と質問。首相は「わが国が主権を有する島々」と答えた。

 日露平和条約締結はわが国の戦後問題を終わらせる懸案だが、1956年日ソ共同宣言を基礎とした「交渉の加速」の際、主権問題の原則を抜きに行うべきではない。第2次大戦でソ連は日ソ中立条約を破り、終戦後もわが国への侵攻をやめずに北方領土まで不法占拠した。これは、戦勝国側が確認した領土不拡大の原則にも反している。

 このような蛮行を容認するような結果になれば、今日のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合でロシアを極度に警戒する欧米諸国など、サンフランシスコ講和条約による日本の国際社会復帰に関して恩のある西側の国々の信頼をも損なう。

 一方、韓国駆逐艦による火器管制レーダー照射問題で二階氏は「客観情報を示してなお、事実を否定する態度に、日本国内から非難の声が上がっている」と発言。首相は「大変遺憾だ。国際法に基づき毅然(きぜん)と対応する」と述べた。野党側が取り上げなかったことは腑(ふ)に落ちない。国の主権を守る自衛隊に対する認識が、与野党で温度差があり、一枚岩ではないからだろう。

 憲法改正論議も進めよ

 この点、首相は憲法改正に関する二階氏らの質問に、自衛隊の憲法明記の必要性を説く中で、自衛隊員の募集活動に協力しない自治体があるなどの問題を述べた。改憲を含め主権問題で真剣な議論を進めてほしい。