韓国大統領の「元徴用工」発言に公明党の山口代表ですら批判を展開

◆解決の責任は韓国に

 いわゆる韓国人「元徴用工」の訴訟をめぐる韓国最高裁判決によって生じた韓国の国際法違反状態。その是正を求める日本に対する文(ムン)在寅(ジェイン)韓国大統領の年頭会見発言(10日)が、険悪と言われる日韓関係の火種に、さらに油を注いで燃え上がらせたことになり、新聞や朝野の良識派と言われる人々からも厳しい批判を浴びせられている。

 「(年頭発言で文氏が)『日本の政治家、指導者たちが政治争点化して、問題を拡散することは賢明な態度とは思えない』などと、日本批判を展開したのには驚いた。/『韓国政府は司法府の判決を尊重しなければならない』とか『日本も不満があっても仕方ないとの認識を持つべきだ』とまで言い放った」

 こう書くのは通常、中国や韓国に批判的な論客ではない。日頃、温厚で冷静かつ沈着、的確な判断を示すことで定評のある公明党代表の山口那津男氏(夕刊フジ16日付)だ。文氏が人ごとのように「この問題は、韓国政府がつくりだした問題ではない」とした言い逃れにも、「両国政府は、関係を正常化するために日韓基本条約を結び、請求権協定で、政府間および国民間の請求権問題も解決した決断こそ尊重しなければならない」(同)と追及。さらに「実際、これに基づいて、韓国政府は、元徴用工に対しても重ねて救済措置をとってきている。文氏は廬(ノ)武鉉(ムヒョン)政権時の大統領府の幹部として、この問題の経緯を熟知している」(同)と、シラを切る文氏に追い打ちをかけて迫った。そして、きっぱりと「解決の責任は韓国政府にある」(同)と断言したのはまさに正論だ。

◆未来志向妨げる文氏

 この点について朝日は「(日韓)両国が心を落ち着かせて考える時である」(11日付社説)とうわべをまとめるが、責任の所在を「両国」と曖昧にするのは世迷い言である。今はいつまでとなく「考える時」ではない。つべこべ言って時間を浪費すべきでなく、速やかに対応策を示して解決に動く責任は韓国にあるのだ。朝日も一方で、文氏に「懸案を乗り切るには、世論の不興を買ってでも従来の政府見解を踏襲し、外交問題をこじらせない策を早期に出してもらいたい」と求めるが、その通りである。

 各紙の論調で鋭い批判を展開するのは産経、読売、小紙(いずれも11日付)の3紙で、その見出しは順に「余りに勝手な日本批判だ」「文氏は判決を言い訳にするな」「日本に責任転嫁するのか」である。

 「『政治的な争点とするのは賢明でない』と日本を批判した」文氏に、産経は「問題を蒸し返し、未来志向を妨げる。『賢明』でない指導者は文氏自身」だと切り返した。さらに、三権分立の建前で言い逃れようとする文氏に、韓国では大統領が「司法にも影響力を行使できる。『徴用工』訴訟で判決を下した最高裁長官は左派として知られ、文氏が一昨年、地裁所長から抜擢(ばってき)した。もう忘れたのか」と畳みかける。そして「国家間の約束と国際ルールに従い、事態を収拾するのが、政治であり大統領の役割」だと説く。同感である。

◆長年の努力を蔑ろに

 読売は日本に「過去の不幸な歴史」への「謙虚な姿勢」を求め批判した発言にかみついた。

 日韓が1965年の基本条約で関係を正常化すると「同時に結ばれた請求権・経済協力協定は、請求権問題の『完全かつ最終的解決』を確認している」ことを指摘。こうした「日韓が積み上げてきた努力が文政権下で蔑(ないがし)ろにされ、問題が深刻化した」と、文政権の歴史に対し不遜な姿勢を批判。今後の対応次第では「韓国の不当性を国際社会に訴えていく」ことも説いたのは当然である。

 小紙も、文氏の発言などに対して「日本の政府や世論に反発するなという方が無理な話だ」と一蹴。「文政権が合意無視を正当化すれば、それは未来志向ではなく過去志向というものだ」と説いたのである。

 このほか毎日(同)は「(文氏が)植民地時代の歴史問題であると強調するなら、これを清算して前進したはずの65年体制をどう考えているのか。問題解決に正面から向き合っていないと言わざるを得ない」。日経(同)も「優先すべきは韓国政府が一刻も早く対応策を示すことだ」と批判はやんわりだが、いずれも文政権の非を指摘するのだ。

(堀本和博)