慰安婦財団解散、一方的な決定は受け入れ難い


 韓国政府は、2015年末のいわゆる従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意に基づいて設立され、元慰安婦らの支援事業を行ってきた「和解・癒やし財団」を解散すると発表した。

 財団解散は合意に反する一方的なものであり、受け入れ難い暴挙である。

 日本との対立が深刻化

 安倍晋三首相は「日本は国際社会の一員として、この約束を誠実に履行してきた」と述べ、その上で「国際約束が守られないのであれば、国と国との関係が成り立たなくなってしまう。韓国には国際社会の一員として責任ある対応を望みたい」と強調した。当然の要望である。

 昨年5月に就任した韓国の文在寅大統領は、日韓合意について「国民の大多数が情緒的に受け入れられずにいる」と表明し、交渉過程を再検証するよう指示。韓国外務省の作業部会は昨年12月に「被害者の意見を十分に集約しなかった」などと朴槿恵前政権時の対応を批判する検証結果を発表した。

 こうした中、財団は運営費の政府予算支援を受けられなくなり、8人の理事のうち民間の理事5人全員が辞表を提出。事実上、活動を中断している。今年9月の日韓首脳会談では、文氏が「元慰安婦と国民の反対で財団は正常に機能しておらず、国内で解体を要求する声が大きいのが現実で、賢く解決することが必要だ」と述べたと韓国側が発表した。

 財団は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった日韓合意の履行を担っていた。日本政府は合意に基づき10億円を財団に拠出し、財団は合意当時に存命していた元慰安婦47人のうち34人に現金を支給している。

 韓国政府は「合意を破棄したり、再交渉を求めたりしない立場を表明しており、この立場に変わりはない」と強調しているが、財団解散は合意を破棄することと同じだ。日韓の対立が深刻化することは避けられない。

 今回の決定は「積弊(積もった弊害)の清算」をスローガンに保守政権の政策の洗い直しを進める文氏が、合意を受け入れない市民団体などに迎合した面もあろう。しかし、日本との関係をあまりにも軽んじていないか。北朝鮮の非核化を実現するためには、日米韓の連携強化が必要なはずだ。

 合意には、ソウルの日本大使館前に設置された少女像について、韓国側が関連団体との協議を行うなどして適切に解決されるよう努力することが盛り込まれた。だが、韓国政府が撤去などに努めた形跡は見られない。それどころか、釜山の日本総領事館前に新たな少女像が設置される始末だ。

 さらに合意では、日韓両政府が国際社会で慰安婦問題をめぐって互いに非難や批判をすることを控えるとしている。しかし文氏は、9月の国連総会の一般討論演説で、韓国が「日本軍による慰安婦動員の被害を直接経験した」と述べるなど、合意に反する姿勢が目立つ。

 「未来志向」に立ち返れ

 今年は「未来志向」をうたった日韓共同宣言から20年の節目だ。文氏は、この精神に立ち返る必要がある。