臨時国会開幕、建設的議論で具体的成果を


 臨時国会が開幕し、安倍晋三首相が所信表明演説で「新たな国創り」に向けた決意を表明した。憲法改正、財政再建、外交などの重要懸案が山積している。

 第4次安倍改造内閣で初の国会論戦となるが、与野党は希望ある将来の青写真を示しながら建設的な議論を行い、具体的な成果の得られる国会にしてもらいたい。

 改憲でも与野党を超えて

 国会会期は12月10日までの48日間と窮屈であると同時に、首相の外遊日程も立て込んでいる。そのため、第2次安倍政権発足後の主な臨時国会では政府提出法案が2016年の19本を下回り、最も少ない13本となる予定だ。ただ、対決法案は多くないことから審議時間は十分確保できるはずである。

 与野党が協力して早期に成立させなければならないのが18年度第1次補正予算案だ。大災害の復旧・復興は緊急の課題である。首相は国土強靭(きょうじん)化のための対策を年内に取りまとめ、3年間集中して実施する考えを示したが、安心して暮らせる故郷をどう創り上げていくのか、党派を超えた議論が必要である。

 改憲についても与野党の協力が不可欠だ。首相は「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の3年間、私はその先頭に立つ決意だ」と語った。その背後には、新たに得た自民党総裁任期の3年中に改憲を実現するとの覚悟があると読み取れる。

 自民党は憲法審査会に党改憲案を提示する予定だが、他党の姿勢は消極的だ。各党が国の理想を語る具体的な改憲案を審査会に持ち寄って議論を深める。その中から、首相の言うように「与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られる」のではないか。いつまでも引き延ばすことは国益に反する。まずは、改憲手続きのための国民投票法改正案の審議に取り掛かるべきである。

 首相が財政健全化に言及しなかったのは後退の印象だ。今年1月の施政方針演説では「確実に実現する」と明言したにもかかわらず、今回は深刻な財政問題を取り上げなかった。全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めるというが、財源の裏付けに根拠を欠く。来年10月の消費税率10%への引き上げが経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる施策を総動員すると語ったが、野党側と議論を深め最善策を探るべきだ。

 「戦後日本外交の総決算」について首相は、自らが北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と向き合い、核・ミサイル・拉致問題を解決して国交正常化を目指す考えを明らかにした。ただ焦りは禁物で、成果を確実に得られることが前提だ。首相は日露、日中の問題も挙げたが、国連憲章の敵国条項の削除も「総決算」の一つに含めるべきだろう。

 国民本位の姿勢を示せ

 主要野党6党派は、出入国管理法改正案、消費税率引き上げ、中央省庁の障害者雇用水増し問題の3点セットに加え、新閣僚の資質問題で与党を揺さぶる構えのようだ。来年の統一地方選や参院選を意識して政府・与党の足を引っ張るのでなく、国民本位の姿勢を示しつつ論戦に挑んでもらいたい。