安倍1強批判に終始し国会で内政・外交の課題を論議させなかった朝日

◆眉唾モノの醜聞記事

 通常国会が閉幕した。何ともすっきりしない、人民裁判のような印象の残る国会だったが、政府提出法案65本のうち60本が成立、成立率は92・3%だというから、どこでいつ、そんな審議をしていたのか、首をひねりたくなる。少なくとも新聞紙上からはとうてい知りえない。

 産経に「花田紀凱の週刊誌ウオッチング」という論評欄がある(土曜日付)。花田氏は『月刊HANADA』編集長で、週刊誌を新聞広告だけで知ったかぶっている筆者にとっては有難いコラムで毎週、目を通して読んだつもりになっている。

 同欄21日付は「森友・加計問題で結局、安倍政権を追い込めなかった朝日新聞が(当然だが)、総裁選を前にまた、なりふり構わぬ安倍政権批判を始めた」と、週刊誌ではなく新聞論評から話を切り出していた。

 「17日1面トップで『古屋議員 過少申告の疑い』、19日にはやはり1面で『野田総務相側、金融庁に説明要求 仮想通貨販売巡る調査』。古屋圭司議員の方は『疑い』だし(本人は否定)、野田聖子総務相の方はほとんどトバッチリだ」

 要するに朝日の1面に載る記事は「安倍憎し」の眉唾モノのスキャンダル記事で、花田氏はこれに引っ掛けて週刊文春の「安倍チルドレン」なる記事を批判していた。

 こんなところにも朝日が引き合いに出されるように「安倍1強」批判の色メガネで政治を論じる朝日の姿勢は通常国会中、まったく変わらなかった。

◆言論の府の惨状招く

 国会閉幕を受けた22日付の社説「安倍1強政治の果て 民主主義の根腐れを憂う」もその類いと言ってよい。「憲法が『国権の最高機関』と定めた言論の府の惨状も極まった。安倍1強政治のおごりがもたらした民主主義の危機は一層深まったと言わざるをえない」と、ここでも紋切り型の安倍1強批判に終始する。

 確かに言論の府の惨状は否定し難い。だが、その責任は安倍政権だけにあるのか。野党をけしかけるメディア(とりわけ朝日)、メディア受けを狙う野党。両者の反安倍共闘が言論の府の惨状を招いている元凶ではないのか。通常国会を見ていて、そう思わざるを得なかった。

 産経21日付で論説委員兼政治部編集委員の阿比留瑠比氏は「もし国会に『野党不信任決議案』という制度があれば、ぜひ提出して可決、成立させてもらいたい。今国会の野党の振る舞い、そのていたらくを見ていてつくづくそう感じた。野党はとにかく感情的だったと断じざるを得ない」と、朝日とは真逆のことを言っている。

 野党が今国会でしてきたことといえばスキャンダル追及、特に贈収賄も何も出てこず、臆測が根拠の「モリ・カケ」騒ぎばかり。昨年中から何度も同じ質問を繰り返すばかりで、揚げ句の果てに自らが提出した法案の審議も拒否して「18連休」を楽しんだ。野党は自分たちはいてもいなくても変わらないのだと、自らの存在意義を否定した。「大嘘(うそ)つき」「嘘つきほら吹き」など立憲民主党の枝野幸男代表の言葉遣いの汚さも、国権の最高機関たる国会の権威をおとしめた―。

 というわけで、阿比留氏は野党不信任案を提出したいとレッドカードを突き付けている。この野党批判はそっくり朝日に当てはまる。

◆動機は改憲つぶしに

 朝日は安倍1強をあげつらうけれども、朝日自身が言うように「衆院選に小選挙区比例代表並立制を導入した90年代の政治改革や橋本内閣での中央省庁再編などを経て、首相の権限が強化されたことが、1強を支えているのは間違いない」ことだ。

 それによってリーダーシップの発揮できる政治への転換を目指してきた。ところが、安倍政権が指導力を発揮すると、とたんに1強批判だ。その動機が改憲つぶしにあるのは明白だろう。

 それにもかかわらず、朝日社説は「次の総裁任期は21年まで。天皇の代替わりや東京五輪を控える。内政・外交とも課題は山積みで、国会審議も含め、政治の闊達(かったつ)な議論が欠かせない」と、したり顔で説諭している。

 内政・外交の課題を論議させなかったのは当の朝日だ。盗っ人猛々(たけだけ)しいにも程がある。

(増 記代司)