骨太方針原案に財政健全化計画への批判なく成長戦略力説した日経
◆PB黒字化5年延期
経済財政諮問会議で先週示された経済財政の基本指針「骨太の方針」原案は、財政健全化に向け、基礎的財政収支(PB)を黒字化する目標時期を2025年度とし、従来目標より5年遅らせた。また、21年度まで社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分相当に抑えることを継続することなどとした。
こうした内容について、読売、産経、日経、毎日の4紙が6日付社説(毎日のみ7日付)で論評を掲載。このうち、読売、産経はそれぞれ「財政健全化が踏み込み不足だ」「黒字化への覚悟伝わらぬ」と強い批判を展開したが、日経は、そうした批判を全く載せず、むしろ「民間の技術革新引き出す成長戦略を」と前向きな注文を付け、先の2紙と大きな違いを見せた。毎日は「外国人就労の受け入れ拡大/共生政策も同時に議論を」と、これまた違う視点の論調だった。
読売、産経の批判はおおむね予想通り。政府はこれまで20年度までのPB黒字化を目指したが、原案は先述の通り、期限を5年先送りし、その「25年度の達成も容易ではない」(読売)状況だからである。
両紙が特に問題視するのは、最大の歳出項目である社会保障費への対応で、検討された19~21年度の伸びの数値目標は、来年の参院選をにらんだ与党内の反対もあって見送られた。読売は「上限という歯止めもなく、与党からの歳出圧力をかわして予算増大を防げるのか、疑わしい」とし、産経も「数字なしで実効性を担保できるだろうか」と言うわけである。
もっとも、財政健全化の「目標設定には甘さが目立」(産経)つのは確かだが、厳しければいいというものでもない。厳しい目標にこだわって過度に歳出削減に進めば、景況悪化、税収減の悪循環に陥りかねない。原案が掲げる、名目GDP(国内総生産)に対する債務残高の比率を安定的に引き下げるという新目標は、成長によりGDPを大きくし赤字を相対的に小さくしていくわけで、より現実的な方向と言える。
◆民間主導で成長加速
その点で、日経が歳出削減に言及せず、成長志向で民間の技術革新を核とした成長戦略の加速を訴えたのは評価できる。
成長戦略はただ、日経も指摘するように、安倍政権が12年末の発足時から「3本の矢」政策の一つに掲げられてきたが、金融緩和や財政出動が進んだのに比べ、「おくれが長年指摘されてきた」。
それでも、日本経済の現状は2%の物価目標に依然届かないものの、物価が持続的に下落するデフレの状況からは脱し、雇用情勢も好転して、景気は山が低いこともあってか、息の長い緩やかな拡大を続けている。
目下の日本経済の課題は、財政健全化と社会保障を持続可能にする改革であり、日経が「そのためには民間主導の成長を加速することが不可欠」「第3の矢の成長戦略を今こそ推進する必要がある」と指摘するのも尤(もっと)もである。
では、成長戦略の遅れをどう克服するか。骨太方針に盛り込まれた成長戦略は、これまで各省庁の翌年度予算編成に向けた重点配分要望という側面が強かった、として同紙が強調するのは、政府の予算を使った官主導ではなく、民間主導の技術革新による自律的な成長への戦略である。
その一つとして同紙は、第4次産業革命とも言われるデジタル技術の革新を経済・社会にいかに取り込んでいくかを挙げ、そのために必要な規制・制度の改革は「今すぐにでも実行すべきだ」と説く。加計学園問題でイメージが悪化した国家戦略特区も、同紙は「透明性を確保しつつ改革推進の仕組みとして有効に活用すべきだ」と強調するが、その通りである。
◆外国人就労に課題も外国人就労に課題も
毎日の「外国人就労…」は、先の3紙とは全く別の論調で、原案が労働力不足のために打ち出した案について、「原則として認めてこなかった単純労働にも門戸を開くもので、実質的な政策転換につながる」と指摘。同紙は、人口減少が進む日本で検討していくことは当然だ、としながらも、「それによって増加する外国人労働者に国内での共生を促す政策は見当たらない」ため、官民で就労受け入れをめぐる議論を深める必要があるとした。
このテーマは日経が7日付社説でも取り上げており、この欄で論評するには紙幅が足りず、別の機会にしたい。
(床井明男)





