野党6党の審議拒否を正論の展開で批判し世論を代弁した産経、読売、小紙
◆強かった世論の逆風
ようやく国会が正常化し、動き出した。立憲民主党などの野党が8日に衆院本会議に出席し、野党が審議拒否を始めた4月20日以来、19日ぶりに論戦が再開された。本会議では安倍晋三首相が、財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題など一連の不祥事を改めて陳謝し、再発防止に努める決意を表明した。
野党の国会復帰は一応「学校法人『加計(かけ)学園』問題を巡り、柳瀬唯夫・元首相秘書官を10日に参考人招致することなどで与野党が折り合ったため」(読売9日付)とされているが、実際は野党6党の審議拒否が「18連休」だとする世論の強い批判に持ちこたえられなくなったからと言っていい。例えば、日経(4月29日付電子版)世論調査では、野党の審議拒否を「適切だ」と支持したのは25%だったのに対し、「不適切だ」が64%と倍以上が不支持を示した。
審議拒否への逆風の相当の強さは、この間に民進党と希望の党が合流してできた国民民主党の玉木雄一郎共同代表が3日に出演したインターネット番組で、地元や親からも「そろそろ(国会に)出たほうがいい」と言われているとこぼした(産経ニュース5日付)ことからもうかがえる。
このため、当初は勢いよく①麻生太郎副総理兼財務相の辞任②財務省の文書改竄調査結果の早期公表③柳瀬唯夫氏ら関係者の証人喚問―など4項目を審議復帰の条件に突き付けていたものの、世論が味方せず、柳瀬氏の10日参考人招致(証人喚問ではない)で折り合わざるを得なかったというのが本当のところだろう。
◆国会議員の自覚欠く
こうした世論を代弁して正論を展開したのは産経(1日付)、小紙(2日付)、読売(4日付)の論調である。
野党の審議拒否に対して産経は真っ先に「『言論の府』の一員であるという自覚に欠けている」と議会政治の本筋論から批判。「国民のため、よかれと信ずる政策を国会で論じ合う。その議員の本分に立ち返ってほしい」と諭し「審議拒否で政権と戦う姿勢を示しても、野党への国民の共感は得られていない。その現実を正視したらどうか」と早く審議の席に戻るよう促したが同感だ。結局、6党はその後、産経の諭した通りにする他なかったのである。
また、内閣支持率の低落傾向が政権への信頼低下を示しているのに「追及する側の野党に期待が集まらない。自分たちの振る舞いにその理由があることに6党は気付かずにいる」との指摘も的確だと言わなければならない。
一方で、産経は政府・与党に対しても「自らの失態が国政に混乱を招いていることへの反省が足りない」ことを批判し、混乱への「対処能力を示す」よう迫った。小紙も「これだけ失態が続けば、長期政権の緩みだと批判されても仕方ない」と政府に苦言し「襟を正し、不祥事の真相の徹底究明と再発防止」を強く求めたのは当然である。
◆新党結成にも不信感
読売も議会政治の基本から説き「外交や内政の課題を論じ、あるべき国の針路を指し示すのが国会議員の本分だ。責任を放棄するような野党の態度は許されまい」と野党の姿勢を手厳しく批判した。特に、産経も問題を指摘しているが、6党が審議拒否して本会議などを欠席する一方で、各省官僚を呼び合同ヒヤリングを頻繁に開いたことには「国会軽視と批判する声は強い」とたしなめた。
さらに、この間に民進党と希望の党が合流して新党結成の運びになったことに対しては「国会に出席せず、自らの足元を固めることに腐心する姿には、違和感を拭えない」(読売4日付)と国民が抱く不信感を突き付けた。この問題では小紙も、先の総選挙で安保関連法についての公約に言及し「希望の候補者に投票した有権者への背信にならないか」「政治不信を助長するだけだろう」と、新党の先行きの暗いことを示しているが間違いなかろう。
野党の審議拒否については日頃、野党寄りとされる朝日の主張を聞きたいところだったが、野党を諫(いさ)めたり諭す良識が発揮されなかったのは惜しまれる。
(堀本和博)