日米首脳会談、北への国際圧力を主導せよ


 安倍晋三首相とトランプ大統領の日米首脳会談が開催され、5~6月初旬に想定される米朝首脳会談への対処方針で、北朝鮮に非核化に向けた具体的行動を求めていくことで一致した。

 ポンペオ氏が極秘訪朝

 トランプ氏の腹心で、次期米国務長官に指名されているポンペオ中央情報局(CIA)長官は、北朝鮮を極秘裏に訪問し、金正恩朝鮮労働党委員長と会談した。

 トランプ氏はツイッターで会談について「とてもうまくいった。良い関係が築かれた」と述べた。首相との会談では「正恩氏に会うのを楽しみにしている。北朝鮮はわれわれに敬意を払い、われわれも北朝鮮に敬意を払っている。今は対話の時だ」と強調し、米朝首脳会談への強い意欲を示した。

 今月27日の南北首脳会談や米朝首脳会談では、朝鮮戦争の休戦協定体制を平和体制に転換する方策が検討される見通しだ。韓国の文在寅大統領は「北朝鮮は完全な非核化の意志を表明している」と強調。「在韓米軍の撤退など、米国が受け入れられないような条件を提示していない」と述べた。だが、楽観的過ぎないか。

 金委員長は先月末、中国の習近平国家主席との会談で「(米韓が)われわれの努力に善意で応え、平和実現に向けて段階的で歩調を合わせた措置を取るなら、半島非核化問題は解決できる」と述べた。条件付きであり、しかも北朝鮮ではなく朝鮮半島の非核化としている。

 これは、韓国が米国に核の傘で守られていることと自分たちの核開発を同列に論じるものだ。平和協定締結に向けた交渉の過程で北朝鮮が在韓米軍の撤退を求めないとは限らない。

 1990年代末には南北に米中を加えた4者協議がジュネーブで開かれ、朝鮮半島の平和体制構築が議論された。しかし、北朝鮮が在韓米軍撤収を主要議題に据えるよう要求したため、成果は得られなかった。

 トランプ政権は水面下の事前交渉で、北朝鮮の非核化や核関連施設の完全廃棄を求めているとされる。北朝鮮はこれまで何度も国際合意を破ってきた。その真意を見極めるとともに、米朝対話が北朝鮮の核開発の時間稼ぎに利用されないよう警戒しなければならない。

 日本は拉致問題が置き去りにされないようにすべきだ。トランプ氏は米朝首脳会談で「拉致問題を提起する」と明言している。完全、検証可能かつ不可逆的な非核化、そして全ての拉致被害者の帰国が実現するまで、北朝鮮に最大限の圧力をかけ続けなければならない。そのために、日米は国際社会を主導することが求められる。

 米のTPP復帰へ説得を

 日米両首脳は貿易についての新たな協議を開始することで合意。首相が環太平洋連携協定(TPP)を重視する姿勢を示したのに対し、トランプ氏は「2国間協定の方が望ましい」との立場を鮮明にした。

 TPPは、アジア太平洋地域に自由貿易圏を築くことで、地域で影響力を強める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。米国のTPP復帰に向け、首相はトランプ氏を説得し続けるべきだ。