自民合区解消案、衆参両院の役割分担も明示を
自民党は参院選挙区の「1票の格差」是正で導入された合区を解消するため、各都道府県から最低1人を選出できるようにする憲法改正案をまとめた。
だが参院議員に地域代表的性格を持たせるのであれば、衆院との役割分担についても明示すべきだ。
改憲での実現を目指す
改憲案は、国政選挙に関する47条に「広域の地方公共団体の区域を選挙区とする場合には、各選挙区で少なくとも1人を選挙することができる」と追加。「広域の地方公共団体」とは都道府県を指すもので、各選挙区で1人は憲法14条が求める投票価値の平等が適用されないようにする。
参院選の合区は2016年の前回から「鳥取・島根」「徳島・高知」で導入された。しかし、地方の声が国政に届かなくなるとして合区解消を求める意見は地方を中心に強い。
人口比例を唯一の尺度とすれば、人口減少と東京一極集中の加速によって合区はさらに拡大しよう。県民性や文化が異なる選挙区の合区には無理も生じる。改憲で合区を解消する方針は妥当だと言えよう。
ただ、そのために都道府県から最低1人を選出するのであれば、参院議員の地域代表的な性格が強まることになる。憲法43条の「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」という規定との整合性も問われよう。
全国知事会の有識者研究会は16年10月、憲法43条で参院を都道府県代表制と規定する改憲草案を策定した。参院を「地方の府」と位置付けるものだ。自民党も改憲案で合区解消だけでなく、衆参両院の役割分担についても明確に示すべきだ。
自民党は参院憲法審査会で、この改憲案を説明したが、連立を組む公明党を含め賛同する政党はなかった。単に合区解消のための改憲案では、地方に強い地盤を持つ自民党の党利党略とみられても仕方があるまい。
参院は政権に対して一定の距離を保ち、多様な民意を反映させ、政府をチェックする役割があるとされている。だが実際は第2衆院化が進み、その独自性は薄れていると言わざるを得ない。衆参両院の多数派が異なる「ねじれ国会」は、国政の停滞を招く。これでは何のための二院制かということになる。
そもそも現行憲法では、衆参両院の役割分担に関する規定があいまいだ。各党は党利党略を抜きにして、二院制の在り方について論じ合い、改憲案を示す必要がある。
一方、自民党は今回の改憲案に、衆院も含め選挙区を画定する際は「人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案」するとの文言も盛り込んだ。1票の格差是正の結果、17年衆院選では複数の選挙区に分かれる市区町が105に達し、議員活動や住民に混乱を与えた。改憲案にはこうした現状を改める狙いがある。
地域の一体性を損なうな
投票価値の平等が重要であることは確かだが、それを極端に推し進めれば地域の一体性が損なわれることになりかねない。「地域の絆」を重視する改憲論議を期待したい。