改憲論議「前進を確信」 首相所信表明演説
北朝鮮、少子化に力点
安倍晋三首相は17日午後の衆参両院本会議で、衆院選後初の所信表明演説を行った。首相はこの中で、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の問題と、急速に進展する少子高齢化を「国難」と位置付け、対応に万全を尽くす考えを強調した。また、与野党の協力で憲法改正に向けた国会論議が進むことへの確信も表明した。ただ、演説は全体として先の衆院選で訴えた内容をなぞる簡潔な構成で、安倍政権下で最も短かった。
首相は北朝鮮情勢に触れ、「わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しいといっても過言ではない」と指摘。北朝鮮への圧力を強めつつ、ミサイル防衛体制を含む防衛力を強化する方針を示した。
少子高齢化への対応については「生産性革命」と「人づくり革命」に取り組む意向を表明。人づくり革命の柱に据えた幼児教育無償化で、20年度までに3~5歳の全ての子供の幼稚園・保育園の費用を無償化すると明言。0~2歳児は低所得世帯を対象に無償化するとした。
改憲に関しては、衆院選で積極的な主張を抑えたことを意識してか、演説を締めくくる中でわずかに言及。それでも改憲勢力で3分の2超の議席を占める現状を踏まえ、野党を念頭に「互いに知恵を出し合いながら、共に困難な課題に答えを出していく。そうした努力の中で憲法改正の議論も前に進むことができる。そう確信している」と語り、来年の通常国会での議論の本格化に期待をのぞかせた。
自由貿易圏の拡大を目指す首相は、環太平洋連携協定(TPP)について、離脱した米国以外の11カ国による新協定の早期発効を目指すと表明。日本や中国、インドなど16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に関しても「野心的な協定となるよう、交渉をリードする」と述べた。
菅義偉官房長官は17日の記者会見で、首相の演説について「わが国の未来を切り開くための決意を政策本位で説明した」と強調。立憲民主党の枝野幸男代表は国会内で記者団に「大事なところは説明しない。いつものことだ」と批判した。希望の党の玉木雄一郎代表は記者団に「短い演説で内容も熱意も薄かった」と厳しく批評した。