「加計」獣医学部認可、本質的な大学の在り方議論を
林芳正文部科学相は学校法人「加計学園」(岡山市)の岡山理科大学獣医学部(愛媛県今治市に新設)を認可したことについて、15日の衆院文部科学委員会で「国家戦略特区のプロセスに基づいて関係省庁の合意の下で適切に進められてきた。先端ライフサイエンス研究の推進など新たなニーズに対応するものと確認された」と強調した。
不足する公務員獣医
自民、立憲民主両党は、審議時間数、割り振りの「入り口論」で対立。野党からは「国民は納得していない。国会に安倍晋三首相と加計孝太郎理事長を呼び、しっかり審議すべきだ」(希望の党・山井和則氏)、「加計理事長と安倍首相は友人で、獣医学部新設に関して首相や官邸から肩入れがあったのではないか」(立憲民主党・逢坂誠二氏)とただす以上の内容ある質問は出ずじまいで、林氏は淡々と「首相からの指示は無かった」と否定する“型通り”の審議に終わった。
参院は16日に文教科学委員会で審議する予定だったが、野党側の申し出で先送りされた。「加計問題」を、超少子高齢化時代に突き進むわが国の「大学の在り方」を考え、討議するきっかけにしてほしいものだ。
文科省は獣医師の増え過ぎを考慮して学部の新設を認めてこなかったが、政府が主導する特区制度で、広域的に獣医師養成大学のない地域で2018年度に開設する1校に限り、容認することを決定。獣医学部新設は1966年の北里大学以来、52年ぶり。加計学園が設置する四国は獣医学部の“空白地帯”だ。
文科省の大学設置・学校法人審議会は今年5月、「獣医師の需要説明が不足している」「教育の一貫性に疑問がある」など是正意見を付けた。8月にも実習計画に是正意見が付き判断保留になっていた。学園側は学習時間を増やしたり、専任教員を72人から75人に増やして年齢構成の偏りを是正したりした。入学定員も3月の申請時から20人減らし140人とするなどして設置審の認可答申にこぎつけた。
ハード面、ソフト面を専門家が審議してパスしたことには大きな意味がある。今治市の菅良二市長は「官民一体で学生の受け入れに取り組んでいく」と愛媛県と共に建設費など最大96億円を補助する方針を決めた。
山本幸三前地方創生担当相が主張するように「ペット診療の獣医師が儲(もう)かるため、家畜など大型動物の獣医師が不足している」のは確かで、地方では鳥インフルエンザや口蹄疫などに対応する公務員獣医が不足する“偏在”が起こっている。
2018年以降の18歳大学入学希望者人口の減少によって、定員の6割を切る限界大学が地方では4割以上と言われている。経営困難な地方私大の公立移管などの“軟着陸”も考えなければならない。
経営改革も求められる
一方、名物教授を招聘(しょうへい)する、地域社会のニーズに対応して地域に貢献する、地元からの入学希望者を増やす、新規学部を設置してユニークな大学へと変貌させるなどの経営改革も必要だ。国や地方自治体の財政支援も欠かせない。「加計問題」の審議の中で、これらの問題を解決する道筋を論じてもらいたい。