衆院選結果、敗北した反安保法制野党共闘
第48回衆議院選挙の全議席が確定した。定数10減の中で、与党の自民党は公示前と同じ284議席、公明党は5議席を減らす29議席だったが、合わせて衆院3分の2以上の313議席の絶対安定多数を占めた。
一方の野党は、民進党が希望の党と立憲民主党の二つの新党に分かれてほぼ拮抗し、共産党と共闘する野党勢力は公示前より少なくなった。
与党は敵失による勝利
今回の選挙は、解散のタイミング自体が争点になったが、最大の焦点は、やはり東京都議会議員選挙で自民党を惨敗に追い込む都民ファースト旋風を巻き起こした小池百合子東京都知事が率いる新党・希望の党の参戦だった。
安倍晋三首相は9月、小池知事の新党結党の動きが本格化する一方、民進党が代表交代に伴う混乱を引き起こし、野党が再編して政局が流動化しようとする中、機先を制して解散に踏み切った。
自民党の都議選敗北の要因として、安倍政権における森友・加計学園問題や議員不祥事があったことは否めない。絶対多数を擁する長期政権内の緩みにより、内閣支持率が低下した。勝敗ラインを過半数ぎりぎりの「自公で233」に設定したことは、公示前に首相自ら苦戦を認めてのことだった。
ゆえに安倍政権は、今回の与党の勝利は敵失によるものと銘記すべきだ。衆院選は政権選択選挙であるが、そのようにならなかった。民進党が自らの党の公認を取り消して希望の党に公認を申請するという有権者に理解しにくい戦術に出た上、希望の党の党首である小池代表は知事職に専念するとして、首相候補になり得なかった。
また、希望の党の政策に反発した民進党左派は、小池氏の「排除」発言を逆手に取り立憲民主党を結党した。が、公示前勢力15と少なく、候補者も78人で政権交代し得ない数だった。さらに、民進党が希望の党と立憲民主党に分裂したため政権批判票が分散した。
こうした状況の野党が万一、寄せ集まって政権を獲得すれば再び日本は混迷に沈むと有権者も理解したのではないか。選挙期間中に各世論調査で希望の党の劣勢と、自民党の堅調な戦いぶりが伝わり、東京株式市場が好感した。与党大勝が判明すると日経平均株価が過去最長の15日連続上昇を記録している。
しかし、多数のおごりや不祥事がないように、政権自らが戒めなければならない。今回の選挙によって「1強多弱」が継続する中、ますますその必要が増したと言える。
立憲と共産が選挙協力
一方、新党の希望の党と立憲民主党は明暗を分けたが、小選挙区でほぼ単独の戦いだった希望の党に対して立憲民主党は共産党の協力で票を上乗せできたことが大きい。「民共共闘」は「立共共闘」に変わり、安保法制に強く反対した野党勢力は立憲民主党の55、共産党12、社民党2と、公示前の民進党88、共産党21、社民党2と比べて大きく後退した。
立憲民主党の「躍進」よりも反安保法制野党共闘が敗北した選挙結果である。