選挙番組で“モリカケ”追及も墓穴を掘った「報ステ」と「NEWS23」

◆論理の稚拙さを露呈

 「反安倍」色の強いテレビ朝日とTBSの選挙報道が、左派野党寄りの偏向スタンスを取ったところで、今さら驚きはしない。しかし、その意図に反して、安倍晋三首相をやり込めるどころか、逆に反安倍論理の稚拙さを露呈させる結果となった番組があった。

 衆議院選挙が公示された翌日(11日)、テレビ朝日の「報道ステーション」は、8党首をスタジオに集めて党首討論会を行った。約40分続いた党首討論のうちの25分が、いわゆる森友・加計(モリカケ)問題に費やされたことにも、この企画に反安倍姿勢が表れていた。朝鮮情勢、憲法改正、少子高齢化などの課題が山積する中、しかも国会の閉会中審査などで、この問題に関して首相の介入はなかったことが明らかになったというのに、今さらモリカケに多くの時間を割くのは異常であるが、そこに番組づくりの意図が表れていた。

 それを裏付けるように、メインキャスターの富川悠太氏は「そもそも今回の選挙は、野党が求めていた臨時国会で森友・加計問題が議論されずに、冒頭で解散となって始まった」と、“モリカケ隠し”だと言わんばかりだった。

 これに対し、安倍首相は「冒頭解散については、共産党の小池(晃)書記局長も都議会選挙が終わった後、『直ちに民意を問うべきだ』と言っていた」と反論。さらには「前川さん(前文部科学事務次官)も含めて、私から頼まれたと証言した人は一人もいない」と、モリカケ問題に自らが介入した証拠はまったくないと強調した。

 左派野党は、解散をモリカケ隠しと批判するが、自民党が東京都議選で惨敗した直後、民進党の蓮舫代表(当時)は「解散・総選挙はいつでも受けて立つ」と述べ、社民党の又市征治幹事長も同じようなことを言っていた。自らに有利になる時は「解散しろ」と言い、不利な状況では解散を批判するのは、当たり前のこと。富川氏やコメンテーターの後藤謙次氏が選挙を通じた政権争いのイロハに言及しなかったのは反安倍で凝り固まっていたからだろう。

◆他党からも援護射撃

 また、モリカケ問題では他党からも、安倍首相に対する援護射撃があった。日本維新の会の松井一郎代表は「獣医学部新設は文科省の既得権益にくさびを打ち込んだ」と言い、日本のこころの中野正志代表も「安倍さんが圧力をかけて今治に決めたわけではない」と安倍政権を擁護した。

 特に、反安倍の言説を一蹴したのは、中野代表の言葉。後藤氏が「森友、加計学園の問題は、最高責任者としての結果責任が問われている。この問題は、総理が結果を出すようなけじめをつけないと延々と続いていくのではないか」と追及したが、安倍首相に代わって中野代表は「(モリカケ問題を)選挙に利用しようとしているだけ。国会で審議を何百時間やったと思っていますか」と反撃した。

 さらに圧巻だったのは、希望の党の小池百合子代表が「都政においても、国政においても情報公開が重要。お友達だ、忖度(そんたく)だと言っていると……ものごとを変えていく時に、改革につながらない」と安倍批判を展開した時だった。すかさず中野代表は「明確な根拠もなしに、お友達政治なんてことを言うのは、品格がない!。大東京の知事さんがいう言葉じゃありませんね。地方をなめていますよ!」と机をたたきながら怒りを露わにし、スタジオの雰囲気を一変させた。

◆漏れたスタッフの声

 TBSの「NEWS23」(9月25日放送)も、モリカケで安倍首相を追及して墓穴を掘った。キャスターの星浩氏が解散理由を質問したのに対し、首相は「大きな決断をする時、国民に信を問うべきだ」と、持論を展開した。これに対して、キャスターの雨宮塔子氏が首相の言葉を遮って「個人的に気になるのは、(野党が)弱っているタイミングでの解散ではないか」と語ったその時、星氏の肩に垂れ下がったイヤホンから「モリカケ!」というスタッフの声が漏れた。モリカケ問題をもっと追及して、安倍を困らせてやろうという番組の狙いがバレバレとなった瞬間だった。安倍首相は余裕の苦笑いだった。

(森田清策)