衆院選、家族の尊重も選択基準に
今回の衆議院選挙について、安倍晋三首相は二つの「国難」を突破するためのものだという。北朝鮮の核・ミサイル問題と少子高齢化問題がそれで、多くの候補者も差し迫った課題だと訴えている。だが社会が安定していなければ内外の危機に対応できないことを考えると、その根幹ともいうべき「家族」の強化に熱意のある政治家が増えなくては日本の将来が危ぶまれる。家族尊重の選良が1人でも多くなるよう、有権者には賢明な投票行動を望みたい。
深刻な少子化や児童虐待
戦後の個人主義の風潮の中、機能不全に陥った家族の矛盾が噴出している。未婚・離婚率のアップ、それに伴う少子化は代表的現象だ。昨年の出生数は初めて100万人を下回った。このままでは、2050年には日本の人口は約9500万人に減るという。少子化に高齢化が重なった結果、現役世代2・4人で高齢者1人の生活を支えていたのが(12年)、50年には1・2人で1人となる。
児童虐待も深刻化している。児童相談所が対応した相談件数は昨年度、初めて12万件を超えた。今後さらに増加する懸念もある。これらの問題は、家庭の中で育まれるはずの健全な結婚観が次世代に伝わらないことで起きている。多くの社会混乱の根はここにある。
今回の選挙では、幼児教育の無償化や待機児童の解消、そして介護職員らの待遇改善などを訴える党が多い。これらは確かに大切だが、根本的には機能不全に陥った家族の再生にどう取り組むかが問われているのだ。
政党や候補者にとって、このテーマは長期的取り組みが必要で票になりにくいため、真っ正面から訴えづらいのだろう。目先の利益にばかりとらわれている有権者も問題だが、政治家が家族再生に背を向けていては、日本は弱体化するだけである。
一方、「保守」を名乗りながら家族崩壊を加速させる恐れのある公約を掲げる党もある。いわゆる「LGBT」(性的少数者)への対応だ。自民党は政権公約で「性的指向・性自認」の理解増進を目的とした議員立法制定を目指すとしている。希望の党はさらに進んでLGBT差別禁止法制定を訴えている。
性に関する価値観は個人・家庭で違う。同性間の性関係はどうしても受け入れられないとする人もいることを忘れるべきでない。LGBTに関する法律制定は、家族をさらに弱体化させるだけでなく、社会を分裂させることにつながるだろう。同性婚問題で、保守とリベラル勢力が鋭く対立している米国社会の現実に学ぶべきである。社会が乱れれば、国防も難しくなる。
わが国の政治家が家族再生に取り組まないのは、憲法に問題があるからだ。個人の権利を最優先価値とし、家族の保護についての規定がない。多くの国の憲法は、家族を社会の基礎単位としてその保護を定めている。
家族条項盛り込む改憲を
選挙後、憲法改正論議が活発化する情勢だが、自衛隊明記や緊急事態条項だけでなく、社会の根幹をなす家族の保護を明確にする家族条項を盛り込むことに熱意のある候補者が国会に議席を得ることを期待したい。