衆院選3極化、新二大政党に作り直す選挙に


 第48回衆院選の序盤戦が進行している。

 自民・公明両党の連立政権に対抗してきた民進党が公認候補を立てず、小池百合子東京都知事が代表を務める希望の党、共産党と協力する枝野幸男氏らが結党した立憲民主党それぞれから立候補した異例の選挙戦となっている。

 政権交代だけに関心

 衆院選公示前に急遽(きゅうきょ)旗揚げした希望と立憲民主の二つの新党は、民進党が前身の民主党時代から抱えていた政策対立による党内矛盾のはけ口になった。民進党は、それぞれ政策的に純化する形で事実上の分党をして選挙に入った。

 このことは、政策を競う政党選挙を企図し、1994年に小選挙区比例代表制を導入した衆院選挙制度改革の趣旨に照らせば、評価できるものと言えよう。

 同改革論議の反省点は、小選挙区制と不可分と考えられた二大政党制の目的が「政権交代」に集約されてしまったことだ。時の政権与党に挑戦する野党第1党をはじめとした政治勢力も、マスコミも政権交代ばかりに関心を注いだ。

 民進党が今回の衆院選を前に空中分解の状態に至った大きな原因は、民主党時代の2009年衆院選で空前の3000万票を集めて政権交代を果たしながら、公約破綻や党内抗争による短命内閣続きの3年3カ月で政権の幕を閉じたことだ。党の理念・政策が浸透せず、党内の保守系とリベラル系の対立、寄り合い所帯のもろさは払拭(ふっしょく)できなかった。

 重要なのは、政権を取ってどのような政策を行うかということと、その遂行能力である。22日の投票を控えて支持を求める各党各候補者の訴えも一段と熱を帯びてきており、政権を懸けた対決は予断を許さないが、有権者の賢明なる判断が期待されている。

 野党になった後の民主党は、支援労組・団体の影響が強くなり中道左派の色彩を強めた。15年成立の安保法制をめぐっても反対する共産党や国会の周辺などでデモ活動を展開した左翼運動と連帯し、民進党に党名変更後も共産党との共闘関係を維持し左傾化した。この共闘でウイングを広げた共産党が野党票を吸収して波に乗り、7月の東京都議選で共産党議席増、民進党は惨敗と明暗を分けた。

 立憲民主は、このような左傾化を良しとするリベラル派が集まった。「憲法9条改悪反対」「『共謀罪法』廃止」「特定秘密保護法廃止」を唱え、共産党と親和性の強い主張が目立つ。一方、民進党前職・元職の多くを公認した希望は「9条を含めた憲法改正論議促進」、安保法制について「適切に運用し、現実的な安全保障政策を支持する」など、衆院解散前まで同一政党にいたとは思えないほど候補者の立場に違いがある。

 与党に緊張感もたらす

 問題は、反米反安保の共産党には体制選択につながる綱領があり、同党との共闘はこれを補完することになるということだ。安倍政権継続を問う一方、与党の政権運営に緊張感をもたらす新たな二大政党制に作り直すことができるかも重要な焦点である。