労働党創立記念日、北朝鮮の無謀な核戦略に歯止めを


 北朝鮮は10日に朝鮮労働党の創立72周年を迎え、国威発揚を図る記念行事を盛大に催した。最高指導者として君臨する金正恩党委員長は7日開かれた党中央委員会総会で演説し、改めて核・ミサイル路線を正当化した。無謀な核戦略は北東アジアの平和と安全に深刻な脅威を与えている。国際社会が結束し歯止めをかけねばならない。

 狙いは米朝直接交渉

 北朝鮮の国営メディアによれば、金委員長は「敵の核戦争の挑発と制裁・圧力を打ち砕き、核武力建設の歴史的な偉業を成し遂げる」と述べ、米国への対決姿勢を鮮明にした。

 先に訪朝したロシア議員団は北朝鮮が近く米西海岸にも到達可能な新たな長距離弾道ミサイルの発射実験を計画していると明らかにした。先月、北朝鮮が強行した核実験は広島型の10倍以上の威力だったと言われる。

 決して起きてはならないことだが、弾道ミサイルの弾頭部分に小型・軽量化された核を搭載し、大気圏再突入の技術などを確保すれば米本土への核攻撃は理論上、可能になる。

 トランプ米大統領がツイッターなどを通じ北朝鮮への武力攻撃を示唆する発言を繰り返していることもあり、米朝間の武力衝突を懸念する声もある。

 だが、多くの識者は核保有は先制攻撃や報復手段よりも均衡抑止に目的があるとみている。最近、2度にわたって北朝鮮のミサイルが上空を通過した日本も、迎撃体制を中心に万全の備えは不可欠だが、北朝鮮の意図を把握することが重要だ。

 これほどまで北朝鮮が米攻撃を示唆する狙いは米国との直接交渉にあろう。その際、懸念されるのは日米韓が分断される恐れがあることだ。

 米国は北朝鮮が非核化に向け行動しない限り対話に応じないとしているが、北に非核化を承諾させるのは難しい状況だ。

 金委員長は党創立記念日に合わせた人事で妹の金与正氏を政治局員候補に昇格させた。肉親として兄を支え、唯一の最側近とも言われる与正氏の表舞台登場は、核・ミサイル路線への揺るぎない意志の表れだろう。

 一方、北朝鮮は米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を廃棄する代わりに、日本や韓国などが射程内に置かれる残りのミサイルについては保有を認めさせる「核凍結」を主張してくる可能性がある。

 トランプ大統領が安全保障問題でも「米国第一主義」を持ち出して北朝鮮の要求を呑(の)むようなことになれば日韓は一種の置き去り状態になる。

 これを防ぐためにも不可欠なのが日米連携の再確認だ。安倍晋三首相はトランプ大統領の当選直後から頻繁に日米同盟の重要性を確認する会談を繰り返してきた。今後も引き続き同様のアプローチが必要だ。

 心配な韓国政府の姿勢

 心配なのは北朝鮮核問題で日米と結束を図るべき韓国・文在寅政権の姿勢だ。国際社会が対北圧力を強める中、人道支援の実施を先月発表し日米を驚かせた。国内では保守派だった朴槿恵、李明博両政権への政治報復とも呼べる動きが連日伝えられる。文大統領には日米韓連携の喫緊性を認識してもらいたい。