“小池劇場”ばかりに目を奪われ希望の党の政策を追及しない新潮
◆見出しで知れる内容
見出しを見ただけで、本文を読まずとも内容が知れるのは、編集の腕なのか、それとも中身がないのか? 週刊新潮(10月12日号)は希望の党を立ち上げた小池百合子東京都知事を特集し、「小池百合子の希望・横暴・票泥棒」の記事を載せた。「初の女性総理誕生の現実味は増すばかり。ここで(略)本当の姿をお見せしよう」という企画である。
12の記事で構成されており、見出しだけでほぼ内容が分かる。大半はよくない評判だ。政治家は実績で評価されるべきだが、知事になってやったことといえば、「東京五輪のボランティアユニフォームを変更したことくらいでは」と、「都政担当記者」は同誌に語る。豊洲移転、五輪費用問題など、結局どれもあやふやなままだ。
なのに「普段は投票に行かない無党派層の主婦を中心とした女性たちが小池さんの最大の応援団」で、「今度の衆院選も、そうした主婦たちが小池さんの標榜する“しがらみのなさ”“クリーンな政治”という甘言に釣られ、“反安倍”を掲げて投票所に足を運ぶ」のだという。
これは「政治アナリスト」の分析だが、女性たちが投票に行ったのは昨年の都知事選のこと。その時、投票率が「前回を14ポイント上回りました。実は、その上積み分というのは、ほぼ25歳から70歳の主婦」で、記事は彼女たちが衆院選でも変わらず支持するという前提だ。
しかし、ユニフォームデザインしか変えられなかった知事としての実績を見てもなお、小池氏を彼女たちは支持するのだろうか。さらに新党立ち上げのゴタゴタや、民進党議員への“踏み絵”強要、「排除の論理」などが明らかになった今、いまいち、根拠のある見通しとは思われない。
◆「安倍退陣」にも言及
今のところ「小池が全部の希望の党」であることを考えれば、「小池」を論じるしかないが、本来なら、この総選挙、“小池劇場”にばかり目を奪われるのではなく、憲法改正、安全保障、消費税など、自民党らが出している政策に対する小池氏の、希望の党の対案を追及することが本筋ではないか。週刊誌を含め、メディアは小池氏の“奇策”に振り回され過ぎている。
その一方で、同誌は「自民党大量絶滅期」の記事も載せた。「安倍一強」と言われていたのがウソのように、自民党に危機が迫っている。「最悪は100議席減」と予測し、「過半数割れが現実味を帯びてきた」というのだ。
そうなると「安倍退陣」は避けられなくなるが、「簡単には辞められない事情」がある。トランプ米大統領来日、北朝鮮の動向、等から「議席を維持」しようとして連立を組むしかないだろうと同誌は見通すが、「政権の椅子にしがみつくことを世間は許すのか」として、「即退陣」もあるという見立て。
◆直撃取材も空振りに
選挙は水物だ。やってみなければ分からない。都民ファーストから複数の離党者が出て、小池氏の「独裁」ぶりが暴露されている。民進党左派が正体を現し、その分、スッキリと分かりやすくなった立憲民主党がどこまで票を伸ばすか。4割の無党派層の動向、等、先が読めなくなってきた。
それでも読もうというのが週刊誌だ。週刊文春(10月12日号)は大胆にも「全選挙区完全予測」を出した。それによると、「自民74減、希望101」になるという。与党は自民党214、公明党34で248議席となり、過半数(233)は維持するものの、憲法改正発議に必要な3分の2には届かない。
ただし、今回ほど情勢が目まぐるしく動く選挙もない。例えば、保守三つ巴(どもえ)の“上州戦争”になりそうだった群馬1区では、中曽根康弘元首相の孫、康隆氏が比例区に回ったことで、自民公認候補の尾身朝子氏が有利になった、というふうに、予測記事とは情勢が変わっているのだ。自民党はじめ各党が死力を尽くして議席獲得を目指しているのだから、当然である。
文春は小池氏へのインタビューを載せているが、この時期、よくつかまえたし、突っ込んだ質問もしているものの、“緑の狸(たぬき)”にいいようにかわされているのが惜しい。
(岩崎 哲)










