基本政策の違い問わず共産党と歩調を合わせ野党共闘に執着する朝日

◆有権者の選択を軽視

 安倍首相が解散総選挙に踏み切った。野党第1党の民進党は“エース”の不倫騒動と離党者の続出、「小池新党」は準備不足、しかも議員の任期は残すところ1年余り。北朝鮮危機が高まれば、解散の時期を逸しかねない。というわけで安倍政権にとっては絶妙の「今でしょ」だった。

 むろん選挙は水物だ。自民党が勝つ保証はない。新党が東京の全選挙区で候補者を擁立すれば、自民党が激減した東京都議選の二の舞いになりかねない。それでも解散だ。前回の落選者(大半は野党だ)や新人候補にとっては待ちに待った時が来た。それなのに朝日は異議を唱える。

 18日付「天声人語」は吉田茂首相の「バカヤロー解散」(1953年)まで持ち出し、「このまま大義なき解散を迎えるなら、今回は有権者がばかにされたことになるか」と言い、20日付社説は「安倍首相による、安倍首相のための、大義なき解散」と断じる。

 いささか筋違いな批判だ。民主党政権でも野田佳彦首相が解散に打って出ている。結果は自民党に政権を奪還され、党内からは今も恨み節が聞こえるが、野田氏は勝負を懸けた。そのように時の首相は解散のタイミングを図る。

 衆議院選挙は政権の信を問うもので、それこそが大義だ。天声人語は有権者をバカにするというが、生殺与奪の権を握るは有権者だ。その選択を軽視するほうが有権者をばかにしている。

◆理念の対立を棚上げ

 すると朝日は22日付社説で「首相の解散権 『伝家の宝刀』再考の時」と、矛先を安倍首相から解散権そのものに向け、「安倍首相が解散に踏み切ろうとするいま、首相がすべての衆院議員をクビにできる解散権のあり方に疑問が募る」とした。だが、朝日にとってはクビになる議員の大半は改憲派だから歓迎こそすれ、反対する理由はないはずだが、それでも反対だ。

 解散は「首相の専権事項」「伝家の宝刀」などとされるが、憲法にそんな文言はないと朝日は言う。それはその通りだが、内閣の助言と承認による天皇の国事行為として解散があり(7条)、これを根拠に解散が認められてきた。解散権をなくせと言うなら、憲法改正を掲げるべきだが、それには沈黙する。

 なぜ、かくも朝日は解散に反対するのか。その真意は民進党をめぐる社説を読めば浮き彫りになる。今月初めに前原誠司氏が代表に選ばれると、6日付社説はこう言った。

 「民進党の支持がなぜ上向かないのか。旧民主党政権時代の挫折だけが理由ではない。野党に転落後も、自分たちが選んだ代表を支えず、毎年のように交代させてきた。互いに足を引っ張り合うバラバラ体質への不信がその要因であることが、いつになったら骨身に染みるのか」

 ここでも肝心の党のバラバラ体質の根本問題を問わない。左右のイデオロギーや公務員労組と民間労組などの理念や政策をめぐる対立だ。それを朝日は棚上げにする。反自民で結束することだけに関心があるから、こんな論調になるのだろう。

 それで民進党から離党する国会議員が相次ぐと、15日付社説は「たび重なる離党騒ぎは党の体力を奪う。結果として、政治の緊張感は失われ、自民党政権を利するだけだ」とし、新党については「特定秘密保護法や安全保障関連法に賛成した小池氏の政治姿勢を見れば、新党が第2自民党のような存在になる可能性もある」と批判する。

◆反自民の論調際立つ

 ともかく朝日には「自民党」はあってはならない存在なのだ。どの社説にも共通しているのは、民進党は団結して自民党を倒せという「闘争メッセージ」だ。この論調は左派紙の中でも際立っている。

 毎日は昨夏の参院選では民進党と共産党の選挙協力を後押ししたが、23日付社説は「北朝鮮情勢が緊迫化する中で、安全保障政策や自衛隊の位置付けをめぐる認識が選挙でも問われる。社会保障の財源や消費増税についての立場も軽視できない」とし、両党間に基本政策の土台が共有されていないとして選挙協力に否定的見解を示した。常識的な見方だ。

 朝日だけが基本政策を問わないで、共産党と歩調を合わせ民共共闘に執着している。やはり朝日は「アカハタ」新聞である。

(増 記代司)