衆院解散、安全保障・憲法争点に戦え


 安倍晋三首相が臨時国会冒頭を含め早期に衆院を解散する意向を固めた。選挙日程については首相が米国から帰国後に明らかにする予定だが、与野党とも既に、臨戦態勢に入っている。今回の衆院解散総選挙は、北朝鮮の核・弾道ミサイルによりわが国がかつてない危機に直面している中で行われる。安全保障政策と憲法改正を最大の争点として論戦し、国民の審判を仰ぐよう求めたい。

民共共闘難しいと判断

 衆院議員の任期は既に折り返し地点を過ぎ、1年2カ月余りを残すのみとなっている。首相としては来年に入ってからの解散では「追い込まれ解散」となり求心力を維持できなくなる。そのため、今年初め頃から解散のタイミングを探っていたことは確かだ。

 8月の内閣改造の1カ月後に早くも解散に踏み切る考えになったのは、北朝鮮による核・弾道ミサイルによる挑発が相次ぎ、今後も継続してわが国の脅威になるとの見通しから、国論を二分して成立させた安全保障関連法の是非と、憲法改正の必要性を問いたいとの思いが強まったからだろう。内閣支持率の回復がその決断を後押ししたことも当然あろう。

 選挙戦の最大の相手となる野党第1党の民進党のごたごた続きもあった。前原誠司代表を担ぐ新民進党からは保守派の有力者が相次いで離党し、その予備軍も依然として控えている。また、共産党との共闘とは一線を画する方針であるため、昨年の参院選1人区で奏功した民共共闘の実現は難しい。

 都議選で威力を見せつけた「小池新党」の結党にも時間がかかる見通しで、そのトップとなる可能性の高い細野豪志元環境相相手であれば十分に戦えるとの読みが働いていよう。「1票の格差」を2倍未満に是正した総定数10減の新たな区割り法も成立している。

 さまざまな客観条件が重なってはいるが、何よりも重要なのは「今そこにある危機」にどう立ち向かうのかを国民に訴え掛けることのはずだ。

 野党側は「森友・加計隠し解散」などと決め付け、国民は真相解明を求めていると主張している。だが、国民が最も望んでいることはその議論ではなく、国民の生命と財産に直接関わる安全保障をどうするかの問題である。その際、活躍するのが自衛隊だが、その存在をどう憲法に書き込むかをめぐって議論を詰めるべきなのだ。

安保法の論戦にも注目

 また、安保関連法を違憲とし、廃止を主張している前原民進党との論戦にも注目したい。政府は既に米艦防護や米イージス艦への給油など安保法による自衛隊の新任務を実行している。日本海で北朝鮮による相次ぐミサイル発射に対し日米のイージス艦が警戒監視活動に当たっているが、海上自衛隊の支援により米艦は基地に戻らず燃料を補給することができる。こうした日米連携強化をどう捉えているのかも問いたい。

 選挙に突入すれば当然、首相、官房長官、防衛相らの選挙活動が制限されよう。ただ、それでも国民に安全保障と憲法を問い掛ける意義は大きいと言える。