前原民進党新代表の共産党的傾向を指摘するも掘り下げ不足の新潮
◆山尾氏に文春砲炸裂
この週は何と言っても民進党の山尾志桜里衆院議員に炸裂(さくれつ)した“文春砲”が最も注目を集めた。週刊文春(9月14日号)のトップ記事「イケメン弁護士と『お泊り禁断愛』」で不倫を疑わせる行動が暴かれている。
前原誠司新代表は、山尾氏が文春に直撃取材されたことなどを受けて、山尾氏の幹事長内定を取り下げた。新体制は出だしからケチがついた格好だ。山尾氏は離党届を出し受理された。
とはいえ、しょせん「不倫騒動」にすぎない。本人は頑強に否定しているし、例によって「男女の関係はありません」と白々しいことを言っている。離党したことで、うやむやに終わってしまうだろう。うやむやにするために一線から退くわけだから。
それに、夫と息子を持つ身でありながら、妻子ある男性との逢瀬(おうせ)を絶てなかった女の欲望ごときで一国の政治が動かされるわけではない。それよりもむしろ目を引くのは週刊新潮(9月14日号)が取り上げた「共産党と訣別した『前原誠司』民進党新代表の共産党的傾向」の方だ。
◆井手氏の持論に心酔
記事は、前原氏といえば「民進党でも指折りの『共産党嫌い』で新自由主義者だったはず」だが、代表選での決意表明の内容を見ると「左翼活動家のアジ演説にしか聞こえない」という。格差をなくし平等な社会をつくる、そのためには国民負担率をドイツ(52・5%)とイギリス(45・9%)の間ぐらいにするというもの。両国ともそのために消費税は20%前後だ。わが国は10%に上げるのにも大ごとなのにである。
同誌は「これらのアイデアを吹き込んだのは、慶応大学の井手英策教授」だと伝える。「消費税を15%に引き上げる」と「20兆円が入ってくる計算」になり、「10兆円を財政健全化に使うと10兆円残る。介護の自己負担8千億円、幼稚園、保育園の自己負担が8千億円。病院の医療費の自己負担が4・8兆円。大学の授業料が3兆円。全部合わせて9・5兆円ぐらい。すべてを無償にはできませんが、国民負担はほぼ消える計算です」と井手教授は新聞のインタビューに答えている。
前原氏は井手氏の持論に「惚れ込んでしまった」そうで、同氏を党調査会のアドバイザーに迎え、個人的にも深い付き合いになったという。
だが、これに異を唱えるのが「法政大学の小黒一正教授」である。「前原さんの言うような社会にするとしたら消費税を35%にしないと間に合わない」とし、「100人中99人の経済学者が不可能と言うでしょうね」とほぼ“全否定”なのである。
前原氏の入れ込みようには党内からも不満が出ているようで、代表選では無効票に「井出英策」と書かれたものもあったという。
この他に同誌は「共産党との選挙協力に前向きな長妻昭氏」が選対委員長に起用されたことを「“親共産党的”な人事」だと批判している。
しかし、井出教授と長妻選対委員長、同誌が挙げる「共産党的傾向」はこの二つだけである。これでは物足りない。せっかくいい目の付け所なのだから、もっと掘り下げて書いてほしかった。というか、今後もこの視点で前原執行部を“チェック”していく必要があろう。
◆ミサイル迎撃できず
同誌のトップ記事「日本は北朝鮮の『核ミサイル」を迎撃できない」はタイミングのいい話題を提供した。ミサイルを迎撃するには、まず敵ミサイルを捉えなければならない。高性能のレーダーが必要だが、施設用の土地、環境アセスメント、維持管理費など予算、どの面をとっても、今日明日の北ミサイルには対応できない。
さらにこれら兵器を造るノウハウを持つ企業が入札に漏れ、新興企業が受注していること。何年も受注できなければ、製造ラインと技術者を遊ばせておくしかない。「ひとたび防衛産業から撤退した企業が、再度立ち上げるのは非常に難しい」と「軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏」は同誌に語るが、重要な視点だ。
同じことは原子炉にも言える。わが国が原発製造をやめれば、開発が止まり、技術力が低下し、海外の企業に後れをとる。何事にも後手に回っているようで、政治が正しく国全体を導いていかなければ、総合力で日本は落伍していく。「『防衛省』『三菱重工』の惨憺(さんたん)たる現実」の記事はそれに気付かせてくれる。
(岩崎 哲)