日露首脳会談、ロシアの対北姿勢は無責任だ


 安倍晋三首相はロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と会談した。会談では、核実験を強行した北朝鮮に対し、日露が緊密に連携していくことで一致。プーチン氏は対話による解決を強調し、制裁強化には慎重な考えを示した。

 制裁強化に否定的考え

 日露両首脳の会談は通算19回目となるが、対北朝鮮政策では意見の対立が目立った。両首脳は北朝鮮の核実験について「地域の平和と安全への深刻な脅威」との認識で一致した。

 だが、安倍首相が石油禁輸などを含む国連安全保障理事会の追加制裁決議の採択への協力を求めたのに対し、プーチン氏は「核問題の解決には政治、外交的手段しかない」と述べ、北朝鮮を窮地に追い込む制裁強化には否定的な考えを強調した。もっとも、具体的にどのような解決策があるのかについては述べていない。無責任である。

 プーチン氏は「ロシアと中国のロードマップが良い基盤になる」と述べた。これは、北朝鮮の核・ミサイル開発の停止と同時に、米韓合同軍事演習の停止を求めるという主張だが、国連安全保障理事会決議に違反する北朝鮮の核・ミサイル開発を米韓演習と同列に論じることは納得できない。仮に米韓演習を凍結しても、北朝鮮が核開発を断念する保証はない。

 北朝鮮を核開発凍結に向かわせるには、痛みを感じさせるような圧力が必要だ。その意味で、ロシアの姿勢は生ぬるい。

 プーチン氏には、ウクライナ南部クリミア半島併合に対する制裁を解除しない米国への反発もあるようだ。5月にウラジオストクと北朝鮮北東部の羅先経済特区の間に貨客船「万景峰号」の航路を新設したのも、北朝鮮への影響力を強めて米国を牽制(けんせい)する狙いだろう。だが、安保理常任理事国のロシアが制裁の抜け穴をつくることは決して許されない。

 忘れてならないのは、北朝鮮の核実験を放置すれば核拡散防止体制が揺らぐことだ。中東地域を含め核保有を熱望する国は多く、北朝鮮の核保有を認めた場合、「核開発ドミノ」につながる恐れがある。

 一方、首脳会談では北方四島での共同経済活動に関し、観光や養殖などの5項目で事業の具体化を目指すことで一致した。首脳会談を踏まえ、日露両国は医療・保健、極東開発など8項目の経済・民生協力プランに基づく合意文書を交わした。

 安倍首相は共同経済活動を、領土問題を解決して平和条約を締結するための「重要な一歩」と位置付けている。だがロシアは先月、北方領土の色丹島をロシアの経済特区「先行発展地域」に一方的に指定するなど、北方領土の不法占拠を既成事実化する動きに出ている。

 領土問題で乗じられるな

 プーチン氏は北方領土に地対艦ミサイルを配備するなど、極東の軍事的要衝として重視している。仮に共同経済活動が実現したとしても、日本に返ってくる保証はない。

 経済協力で譲歩を引き出そうとするやり方は、ロシアに乗じられるだけだ。日本はロシアの不当性を粘り強く訴え続ける必要がある。