前原新代表、「民共路線」と決別して出直せ


 民進党の新代表に前原誠司元外相が選ばれた。

 前原氏は「新たな選択肢を示し、国民に対する使命を果たす」と決意を表明した。そうであれば「民共路線」と決別し、解党的出直しを図る必要がある。

 信頼を失った蓮舫氏

 旧民主党の政権転落後、党名を民進党に変更しても低落傾向に歯止めは掛からない。それは野党第1党であるにもかかわらず、政府・与党と建設的な議論をしようとせず、批判するだけで終わっているからだ。

 本来であれば、デフレ脱却に向け、安倍政権の経済政策「アベノミクス」に代わる案を示すべきではないのか。また、弾道ミサイル発射などの挑発行動を繰り返す北朝鮮の脅威への対処は喫緊の課題だが、民進党から具体的な提案は聞こえてこない。

 そして一番の問題は、選挙などで共産党と協力する民共路線を進めたことだ。共産党は綱領で日米安保条約破棄や自衛隊解消を掲げている。「日米同盟の深化」を唱える民進党とは相いれないにもかかわらず、共闘するのは「野合」と批判されても仕方がない。

 共産党は、警察庁が「現在においても『暴力革命の方針』に変更はないものと認識」(政府答弁書)している政党であり、破壊活動防止法に基づく調査対象団体だ。得票数を伸ばすために、このような政党と選挙で協力するのは、国民への背信行為だと言わざるを得ない。民進党は結党宣言で「真の意味での国民政党となる」とうたっているが、これでは到底支持を得ることはできないだろう。

 代表が交代しただけで党勢を回復できないことは、前原氏もよく分かっているはずだ。前任者の蓮舫氏は、台湾籍との「二重国籍」問題が発覚して信頼を失った。民共路線を進めたが、東京都議選で惨敗し、細野豪志元環境相や長島昭久元防衛副大臣ら離党者も相次ぐなど、目も当てられない状況となった。

 前原氏は来週中にも、幹事長などの執行部人事を決定する考えを示した。政府・与党に現実的な対案を示すことができるよう、前原色を打ち出せる布陣を構築すべきだ。

 民進党内には保守系とリベラル系の根深い対立があり、これが政権転落の大きな原因ともなった。民進党が二大政党制の一翼を担い、政権担当能力を高めるには、こうした党内対立を解消することも求められる。

 「安倍1強」が続く一方、安倍政権のおごりや気の緩みも指摘される。政治に緊張感をもたらすには、国民の信頼の厚い野党の存在が欠かせない。民進党がこのような「責任野党」となれるか、それとも「反対野党」として衰退の道を歩むのか、前原氏の手腕が問われる。

 脇の甘さを克服せよ

 前原氏は旧民主党時代の2005年9月に代表に就任したが、民主党衆院議員だった永田寿康氏が虚偽メールを元に自民党を追及した06年の「偽メール事件」の責任を取って辞任。民主党政権時代には政治資金規正法が禁じる外国人からの献金を受け取っていたことで外相を辞任している。党の立て直しには、自分自身の脇の甘さを克服することも必要だ。