民進代表選、基本政策なければ「受け皿」は他に、と引導渡した日経

◆ピントのズレた両者

 「最大の焦点は、党の基本路線を左右する、共産党との衆院選協力のあり方である」(読売・社説22日付)

 民進党は明日の臨時党大会で、新しい代表を選出する。この21日から始まった前原誠司・元外相と枝野幸男・元官房長官の一騎打ちとなった党首選びで、最大の焦点が党の基本路線についてという内向きなもので、政権構想や安全保障・外交などの国の基本政策についてではなかった。北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威にさらされている今の日本の安全をどう守っていくのか、喫緊の課題など眼中にない、そのこと自体が政権の受け皿となる志も覚悟もないことを示していて、不毛な代表選と言っていい。

 主権と国土、国民の生命と生活を守っていくことが政治の要諦であるのに「それをまっ先に語らないリーダーが、野党第一党ひいては政権党として、国政の舵(かじ)を取れるだろうか」(産経・主張23日付)。産経の疑問は大半の有権者が感じているもので、どちらが代表に選ばれるにしろ、すでに両者のピントは相当にズレているのである。

 当然、代表選のスタート前後に出た各紙の論調は一様に厳しい。日経(社説22日付)「党の存在意義が問われる新代表選び」、読売(同)「瀬戸際の党を再生する機会にできるのか」、朝日(同)「この崖っぷちを乗り切れるかどうか。野党第1党としての存在意義が問われる」など、民進党はその存在自体が問われている。「野党第1党が政権批判の受け皿と認知されない中でのトップ選びだ」と、期待されていない代表選だと切り出したた毎日(同)も「『もう後がない』と自覚し、民進党の理念と覚悟を国民に向けて示せるか」と厳しく問い詰めるのだ。

◆失望顕わにする朝日

 どうして民進党がここまで追い込まれたのか。前身の民主党政権が決められない上に失政続きで国民を裏切ってきたツケが残ったままなのに、野党第1党となっても責任ある野党とはならなかった。「国会では反対するだけで代案を提示することはなかった」(小紙・社説21日付)からだ。党内はまとまりを欠き、党代表が毎年のように交代することに野党寄りの朝日ですら「約5年前の旧民主党政権の挫折後、代表選は早くも4度目。あきれる人も多かろう」と、失望を顕(あら)わにしている。

 日経は「旧民主党は2012年末に下野した後も政権時代の失敗の総括を後回しにし、組織内の結束や選挙での野党協力を優先してきた。それでは党代表の顔を何度も替え、党名を変更しても、有権者は政権を再び委ねる気にはならない」と分析し、これまでの無責任体質を指摘。失政続きの政権時代を反省しないままの上に、野党の責任すらも果たさないのでは、有権者の信用・信頼は得られないという当たり前のことを叱ったのである。

 いちいちもっともな指摘であるが、党が政権の受け皿として期待されなくなった最大の理由は、民進党が国政の根幹を成す安全保障政策などで何をしたいのかがおよそ見えてこないことだ。

◆現実路線求めた産経

 路線問題が絡む憲法や安全保障などの基本問題で民進党は、旧民主党時代の「決められない体質」を引きずって論議を回避してきた。これについて毎日は今や「党内対立の火種となってきた憲法改正や安全保障政策も含め、徹底的な議論が必要だ」と迫り、朝日は「民進党は何のために、何をする政党なのか。どんな社会の未来図を描くのか。愚直でも、徹底した論戦を通じて国民に示す」ことを求めている。

 だが、いま民進党に求められているのは「政権批判の受け皿になり得る政策の提示」(小紙)に他ならない。「民進党が描く日本の将来像や成長戦略、社会保障などの基本政策はいまだにはっきりしない」ことを批判する日経は「今回の代表選も内向きの論争に終始するようなら、政権の受け皿の役割は他の勢力が担うしかない」と引導を渡している。「前原、枝野両氏が安全保障関連法を違憲と断じたのは疑問だ」と論じた読売は、内外情勢の変化から「憲法は、現実との様々な乖離(かいり)が生じている。民進党内にも改正論は根強い。責任政党として、改正論議には積極的に臨む」ことを求めた。これらの内容をひっくるめて産経が民進党に、前身の民主党が安保問題で躓(つまず)いたことを教訓に具体的な「現実路線を通じて信頼回復の道を歩むこと」を求めたのは妥当である。

(堀本和博)