日本新党ゆかりの小池都知事らの因縁で政界再編を囃した「新報道」

◆国政進出アナウンス

 7月の東京都議選での自民党敗退から1カ月。安倍晋三首相は3日に内閣改造を行い、第3次安倍第3次改造内閣を発足させた一方、圧勝した都民ファーストの会を率いた小池百合子都知事が国政進出に動き出した。

 6日放送のフジテレビ「新報道2001」は、「先週水曜(2日)、小池都知事は都民ファーストの会で国政選挙の準備を進めていることをフジテレビのカメラの前で語った」として、国政進出への意思を表明する小池知事の発言を放送。スタジオにも、小池知事に従い自民党を離党した若狭勝衆院議員はじめ、蓮舫民進党代表の辞任に伴う9月の同党代表選に立候補する前原誠司元外相、塩谷立・自民党選挙対策委員長ら政界のキーマンを揃(そろ)えていた。

 が、軸となるのはスタジオからではなく小池知事の発言で、「『希望の塾』も再開しようと思ってますし、これまでの塾生も3000人ほど残ってますし、いろんな政治レベルでの担い手というのは既に用意している」というもの。同テレビ側の「国政に出られるレベルの方々もたくさんいるということでしょうか」との質問に、小池氏は改めて「3000人。はい」と述べていた。

 この内閣改造1日前のテレビ向け発言は、政局を意識したと映る。若狭氏は小池氏の国政「3000人」発言を、その中に適性のある人がいるとフォローしながら、「私が今度進めようとしている国政新党」に、参加に向け接触している現職議員は「少なくとも5人以上いる」と明言。また、民進党離党を4日に表明した細野豪志衆院議員について、新党に向けた協議に前向きな返事をした。

 実際、若狭氏は翌7日に国会内で記者会見を開き、都民ファーストの会と連動した「日本ファーストの会」の設立を発表。今後、都議選の時のように、いずれ総選挙前に小池知事の「共同代表就任」もあるかもしれない。既に日本維新の会共同代表を務めた橋下徹氏(前大阪府知事、前大阪市長)の例もある。

◆政権交代の状況か?

 ただ、同番組は政界再編成を期待してか、小池知事が自民党を離党し都民ファーストの会代表に就いた6月1日の「私の出発点は日本新党、原点に戻った」という発言を捉えて、かつての日本新党ブームへの礼賛が行き過ぎていた。

 出演していた前原氏、コメンテーターの中田宏・日本の構造研究所代表も日本新党出身ということもあろう。特に、日本新党で前原氏が1992年参院選に出馬した小池氏の遊説隊に入り、また93年衆院選に立候補した前原氏の応援に参院議員に当選後の小池氏が入るなどの記録フィルムを流し、小池氏と前原氏の因縁を深く印象付けていた。

 この中で番組は、93年衆院選で35人当選した日本新党ブームと同党代表・細川護煕首相の連立内閣発足などの映像で「38年ぶりの政権交代が実現した。今の状況と似ていないだろうか」とのナレーションを流した。が、早とちりもいいところだ。前原氏は「民進党の再生」を目指すと述べていたし、政権交代も起きていない。状況は全く似ていない。

 93年の政権交代は、自民党で小沢一郎氏のグループが党内最大派閥・経世会の派閥内抗争に敗れた揚げ句、集団離党して新生党を結党する分裂があったことが最大要因だ。日本新党で政権交代したわけではない。

 もう4半世紀前のことであり、このようなテレビの事実を踏まえぬワンフレーズ・ナレーションは曲者だ。「今、政権交代の時」というムードに誘導するものだろう。とりわけ問題と感じるのは、わずか8カ月で8党会派の連立政権を放り出した細川首相らのお粗末な顛末(てんまつ)に触れず、政権交代時までの映像で美化した点だ。

◆混迷リスクも心得よ

 選挙は勝敗があることでスポーツに共通するが、ワンサイドゲームは確かに面白くない。相撲でも常勝横綱が勝つよりは前頭の金星がマスコミの脚光を浴びることがある。それでも、相撲は実力がなければ平幕にとどまるが、選挙は、時の人気や世論の勢いが決定的な結果を招くことがある。

 そのため、政治が混迷する可能性もあることは経験済みではないのか。25年前のように、政界再編や政権交代を手放しで囃(はや)す段階は過ぎている。

(窪田伸雄)