新閣僚のアラ探しに終始し「将来の総理候補」潰す文春・新潮

◆江崎氏に集中砲火へ

 「第3次安倍第3次改造内閣」がスタートした。週刊誌は血眼になって“身体検査漏れ”を探し、大臣席に就くやいなや引きずり降ろすべく、手ぐすね引いていた。ところが、自ら“飛んで火に入る夏の虫”がいたのには驚いた。江崎鉄磨沖縄北方担当相のことだ。

 週刊文春(8月17・24日号)は「安倍『仕事人内閣』を“必殺”身体検査」をトップに載せ、野田聖子総務相、河野太郎外相、茂木敏充経済再生担当相らを取り上げている。新内閣の目玉である野田氏や河野氏を真っ先に“やり玉”に挙げるのは攻撃のセオリーに合っている。だが、今回は意外なところに大穴が開いていた。

 江崎氏は、「国会答弁では役人の書いた文章を読む」と言ってみたり、北方領土の島名がすぐに出てこなかったり、「日米地位協定の見直し」などと所管外のことをしゃべっては、官邸を慌てさせ、野党からは猛反発を食らった。すぐに陳謝したが、発言は撤回せず、国会が始まれば、野党から集中砲火を浴びせられるのは必定だ。

◆「失言」でなく「酒癖」

 江崎氏が就任早々に“やらかして”しまうだろうことは予想されていた。しかしそれはこうした「失言」ではなかった。文春が記事で指摘したのは「酒癖」である。「政治部記者」の話として、「昼間から飲むのは有名で、国会の議員食堂で紅茶にブランデーを垂らしていた、移動の車の中でも飲んでいたなどエピソードには事欠かない」と伝える。

 特に初閣議後に出される恒例の「振る舞い酒」の飲み方が、安倍首相をキレさせたという。安倍首相は、「江崎さん飲んだらダメですよ」と声を掛けたが、それを聞かず2杯目にも口を付けると、さらに首相は、「ダメだダメだ、江崎さん。これから会見なんだから」とたしなめた。にもかかわらず、「これで勢いがついて、舌が滑らかになります」と調子づく始末。「さすがに、怒った安倍首相は『ダメだ』と言って、手でバツ印を作り、その場が凍りついたという」と同誌は描写している。

 酒で失敗する人は多いとは言うが、閣僚の失敗は許されるものではない。この人に自覚はあるのだろうか。実はないのである。もともと閣僚就任は固辞していたのもあって、「不適任だというなら、いつでも私(大臣を)辞めてやるから」と居直っているのだという。

 どうやら派閥の論理で推薦されたらしいが、同誌はこの辺の経緯をもっと丹念に書き込むべきだった。でないと居直りの理由が分からないからだ。

◆公選法違反の疑いも

 週刊新潮(8月17・24日号)も改造内閣の「身体検査」を載せ、「D判定(不合格)」を付けられた人物を紹介している。その筆頭が茂木経済再生担当相だ。文春では、「仕事力は際立っている。ただ人柄がねえ…」と「現役閣僚」の声を紹介し、「秘書をトイレで土下座させていた」こともあると書いている。そういえば、茂木氏と同じように東大卒でハーバード大で学んだ秀才がいた。豊田真由子衆院議員だ。

 新潮が指摘するのは茂木氏の「人柄」もさることながら、「公職選挙法違反」の方である。後援会会員に「衆議院手帳」を配った。1冊600円を3000部ほど。毎年後援会幹部を中心に支持者に「配っている」というのだ。しかも後援会費を払っている人はほとんどいない。つまり無償で配布していることになる。

 「神戸学院大学の上脇博之教授」は「『寄付行為』に該当し、違法である可能性が高い」と指摘。第2次安倍改造内閣で松島みどり氏は「80円のうちわ」を配って法相を辞任したケースもあるから、手帳はアウトになるかもしれない。

 茂木氏は将来の「総理候補」に擬せられている。たかだか手帳ごときで躓(つまず)くのは“もったいない”が、それが日本政治の現状だ。「将来の総理候補」と呼ばれた瞬間から、アラ探しが始まる。それで結果的に「いい総理」が選ばれてくればいいのだが、ただつぶすだけでは国民の不利益だ。

 躓きを跳ね返して、政治家としていい仕事をし、評価を待つ。だから、週刊誌はじめメディアは「いい仕事」を見極めて、読者に知らせる責任も同時にあることを自覚するべきなのだが、現状はアラ探しだけで終わっている感がある。

(岩崎 哲)