通常国会閉幕、憲法改正へ態勢立て直せ
第193通常国会が18日、150日間の会期を終え閉幕した。天皇陛下の退位を可能にする特例法案については与野党が当初の立場の違いをすり合わせて円滑に成立させたが、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法案に関しては、野党による学校法人「森友学園」や「加計学園」問題の追及ばかりがクローズアップされて本質的な議論が十分行われず、与野党も国民も納得できない形での法案成立となってしまった。
謙虚な姿勢忘れるな
通常国会閉幕を受けて19日夕、記者会見した安倍晋三首相も冒頭から、政策とは関係ない議論ばかりに時間が割かれて建設的な議論が行えなかったと述べた上で、その責任の一端が「印象操作のような議論に対し、つい強い口調で反論してしまう私の姿勢」にあることを認め、「深く反省している」と述べた。
国会での答弁では強気な姿勢を崩さなかった首相だが、報道各社が通常国会の最終盤に行った世論調査で、内閣の支持率が10ポイント前後低下したことが判明し、一歩退いた形だ。加計学園問題では当初「怪文書」とした文書の再調査に追い込まれた上に、文部科学省と内閣府の調査結果の食い違いが露呈。また、「テロ等準備罪」法案について、参院の委員会採決を省略し「中間報告」によって一気に本会議で採決し成立させた。
このような対応に「長期政権のおごり」がなかったか。首相が表明した「信なくば立たず」という言葉をもう一度かみしめ、「何か指摘があればその都度、説明責任を果たしてまいりたい」という謙虚な姿勢を忘れないでもらいたい。
一方で野党、特に民進党の対応にも不満が残る。規制改革の名の下に安倍首相が支持者や友人に不当な便宜を図ったのではないかとの疑惑を追及しようというのだろうが、それに固執するあまり、国家戦略特区の停止法案まで提出するに至った。
「角を矯めて牛を殺す」という言葉があるが、改革政策の進め方の不備を追及するに窮して、「安倍政権がやっているから」という理由だけで、改革政策自体を止めさせる側に立ってしまうのだ。このような構図は憲法改正論議についても見られ、民進党に対する不信感を高めている。安倍政権が大きく支持率を低下させたにもかかわらず、民進党の支持率がほとんど上昇していないことが、これを雄弁に物語っている。
参院の審査会開かれず
安倍首相は憲法施行70周年に合わせ、自民党総裁として9条に自衛隊を明記する改正を行い、2020年に新憲法を施行する方針を示し、党の憲法改正推進本部の体制を強化して憲法論議の活性化を図った。今国会も加計学園問題などのあおりを受けて憲法審査会の議論は停滞し、参院では審査会が設置された07年以来初めて通常国会で一度も審議が行われなかった。
首相には今後、予想される党役員人事と内閣改造を通して、今国会で十分議論できなかった経済の活性化、北朝鮮の核・ミサイル対策、憲法改正などを強力に推進する態勢を整えてもらいたい。