テロ等準備罪、対策強化は待ったなしだ


 「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が、衆院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決し、参院に送付された。全世界でテロの脅威が高まっており、対策強化は待ったなしだ。速やかに成立させる必要がある。

 国民の不安あおる野党

 英中部マンチェスターの屋内競技場では、自爆テロで22人が死亡した。欧州では2015年以降、パリ同時テロなどの大規模テロが相次ぎ、犠牲者は300人を超えた。

 20年東京五輪・パラリンピックを控える日本にとっても、決して人ごとではない。テロ対策強化には国際社会との連携が不可欠だが、日本は187カ国・地域が締結している国際組織犯罪防止条約にいまだに加盟できていない。法案成立は条約加盟の条件ともなる。

 「テロ等準備罪」法案は、テロに加え、詐欺や薬物取引など計277の犯罪について、準備段階で処罰可能とする内容。テロ集団や暴力団、麻薬密売組織などの組織的犯罪集団に対するものであり、一般の人たちが捜査対象となることはない。

 準備段階で罰することができるようにしたのは、テロなどの組織犯罪を未然に防ぐためだ。特にテロの場合、実際に発生すれば、今回のマンチェスターでの事件のように多くの犠牲者が出る恐れがある。国際組織犯罪防止条約も、締約国に「合意(計画)」段階から処罰するよう義務付けている。

 ところが、民進党などの野党は「当局の恣意(しい)的運用により、一般市民も捜査・監視の対象になる余地がある」などと国民の不安をあおるような批判を繰り返した。関係場所の下見などの準備行為も「花見か下見かは本人にしか分からない」などと指摘。憲法が保障する個人の「内心の自由」に踏み込まざるを得ないと追及した。

 民進党は法案の廃案を目指すとしているが、野党第1党としてあまりにも無責任だ。安倍政権批判に重きを置くあまり、国民の安全をないがしろにしていると言わざるを得ない。

 「反対のための反対」は、集団的自衛権の行使を限定的に容認した安全保障関連法の審議の際にも目立った。中国や北朝鮮の脅威増大で日本を取り巻く安保環境が厳しさを増す中、国民の安全を守るためには欠かせない法整備だが、民進党の前身である民主党は「徴兵制につながる」などと的外れの批判を繰り返した。

 民進党が次期衆院選に向け、日米安保条約の廃棄や自衛隊の解消を唱える共産党と選挙協力を進めているのも理解し難い。これでは政権復帰など到底不可能だ。

 日本でも1970年代に左翼過激派によるテロが相次いだ。71年の渋谷暴動事件で警察官を殺害したとして指名手配された中核派の大坂正明容疑者とみられる男が逮捕されたが、過激な思想を持った日本人が減っているわけではない。こうした集団への警戒も求められる。

 情報機関創設の検討を

 テロを未然に防ぐには、事前の情報入手が肝要だ。テロ対策強化のため、政府は本格的な情報機関の創設も検討すべきだ。