重要法案審議で建設的論戦を


 97兆5000億円の過去最大の2017年度予算が成立し、国会は後半戦に入った。このところ、学校法人「森友学園」問題で国会審議がほぼ一色となったが、重要法案は山積している。与野党には緊張感をもって建設的な論戦を行うことを望みたい。

猶予許されぬ安保論議

 通常国会開幕当初は、日米同盟強化の重要性を確認したトランプ米大統領と安倍晋三首相との初の首脳会談があり、外交・安全保障論議が活発に行われた。ところが、文部科学省高官の天下り、陸上自衛隊の日報問題など徐々にテーマが移った。

 2月中旬以降からの「森友学園」問題では、国有地の8億円もの減額売却をめぐって政治家の関与と行政の関わりが疑惑として浮上。加えて、籠池泰典氏が国会証人喚問で安倍首相夫人の昭恵氏から100万円の寄付金をもらったことなどを証言したことで他の審議の多くがストップする事態となった。

 この問題の解明は今後も続けていくべきであるが、国家の最優先課題を論ずべき国会の主要テーマではない。民進党など野党は昭恵氏の証人喚問を改めて求め、衆参の各委員会で追及を続ける方針という。安倍「1強」政権を揺さぶる好機としたいところだろうが、重要法案は山積している。

 重要課題の第一は「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の取り扱いだ。20年東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策は不可欠である。審議の入り口論で自民、公明両党の意見が合わないのは早急に解決しなければならない。

 公明党は都議選を念頭に、民法改正案と刑法改正案の優先審議を主張している。だが、自公両党は「テロ等準備罪」法案の今国会での成立方針を確認しているはずだ。公明党には、同法の成立が国際的な捜査共助の強化につながるなどの意義を踏まえ成立に尽力してほしい。

 一方、野党側には冷静さが求められる。民進党などの野党は現代版「治安維持法」とか「一般市民も処罰される」などと極論を展開している。まるで、一昨年の安保関連法審議の際、「徴兵制になる」などと国民をあおって反対した論法と酷似している。激突を目的とするのでなく、議論と理解を深め共通項を探る姿勢が必要だ。

 安全保障の議論は一刻の猶予も許されない。北朝鮮が核・ミサイル開発を進展させ、近く6回目の核実験が予想されている。トランプ米政権が対北朝鮮政策の見直しを進める中、わが国も対応が問われている。自民党が安倍首相に「敵基地攻撃能力」保有の検討を急ぐことを促したが、極東危機への対処に最善を尽くさねばならない。

 憲法改正論議を高めることも必要である。憲法審査会が4カ月ぶりに討議を再開した。各党が改正項目を持ち寄り、改正原案をまとめてほしい。このほか、天皇陛下の退位に関する法整備や働き方改革関連法案など目白押しである。

 党利党略で運営妨げるな

 国会会期は6月18日までで都議選を控えているため大幅な延長は困難だ。窮屈な審議日程であり、党利党略で国会運営を妨げてはならない。