朴前大統領逮捕、韓国の安保空白は禁物だ


 韓国の朴槿恵前大統領が収賄や職権乱用などの容疑で逮捕された。昨年の国政介入疑惑を発端とする混乱の中心にいた朴氏は結局、国会の弾劾訴追、憲法裁判所による罷免、検察の逮捕という厳しい処遇を受けた。

 これで韓国大統領経験者の逮捕は全斗煥、盧泰愚元大統領に続き3人目となり、大統領が任期末や退任後に不幸な末路をたどった歴史がまたもや繰り返される形となった。
高まる重任制導入の声

 朴氏には最大財閥サムスンからグループ内の企業合併を後押しした見返りに約束分も含め総額約43億円の賄賂を受け取った疑いや、長年の友人、崔順実被告と共謀し文化・スポーツを名目とする財団への寄付を大企業に強要した職権乱用などの容疑が持たれている。

 韓国メディアは、5月9日の次期大統領選の運動期間が始まる今月17日までに起訴される可能性が高く、裁判で有罪が確定すれば10年以上の懲役が予想されると報じた。わずか4カ月前まで大統領の職務を遂行していた人物の転落劇は、ドラスチックに浮沈する韓国社会を改めて印象付けている。

 大統領への権力一極集中が著しい韓国では、実際に大統領が強権を発動したり、本人や親戚が権力や地位を利用して収賄に走ったりするケースが頻繁に見られ、国民の不満や不信は根強い。これらが政敵同士の激しい争いの温床となり、大統領の不幸な末路に結び付いてきたと言える。

 朴氏の場合、一民間人に国政介入を許すという特殊な事情はあったにせよ、不正の構図は歴代大統領らと同じであり、その意味では韓国政治が抱える構造的問題に根本原因を探るべきかもしれない。すでに韓国内では憲法改正による任期4年の大統領重任制導入について議論が進められているが、これを急ぐべきだとする声が今後さらに高まりそうだ。

 同じ北東アジアで民主主義と市場経済という共通の価値観を有する隣国・韓国の政情不安や社会的混乱は日本にとってもプラスにはならない。特に北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返し、中国が米国と日韓との同盟関係に揺さぶりを掛けている現状で、安全保障の空白は禁物だろう。

 韓国では北朝鮮から工作員が潜入してきたり、国内「親北」派が体制転覆まで企てようとしたりした事件があった。決して警戒を緩めてはならない。

 朴氏逮捕で保守派が打撃を受け、次期大統領選では左派系野党への政権交代が一層現実味を帯び始めたことで、日韓関係への影響も心配されている。

 各種世論調査でトップを維持する最大野党「共に民主党」の文在寅氏は、いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意や北朝鮮の脅威に備える日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結など朴前政権の成果に批判的だ。国内向けパフォーマンスの域を超え、重要な隣国との関係を揺さぶるような政策に転換させはしまいか懸念される。

日米韓連携は重要だ

 誰が政権を取っても日韓関係と日米韓3カ国連携の重要性だけは十分認識してもらいたい。