まるで韓流の歴史ドラマを見ているよう、と…


 まるで韓流の歴史ドラマを見ているよう、と思った人も多いだろう。韓国の朴槿恵前大統領が収賄などの容疑で逮捕され、ソウル拘置所に収監された。つい数カ月前まで権力の頂点にあった人物が、独房で過ごす身となった。

 与党・自由韓国党の金鎮台議員は「宮廷から追い出されて、私邸で涙で明かす女性に毒薬を下すようなもの」と言う。朴氏の容疑がどれだけ悪質なもので、証拠隠滅の恐れがどれだけあるのかを考えると、金氏のコメントは案外、収監の本質を突いているようにも思える。

 もっとも、繰り返される悲劇という印象も強い。これまで全斗煥、盧泰愚両氏という大統領経験者が逮捕されている。盧武鉉氏は親族の不正への追及で自殺、金泳三、金大中、李明博の3氏も親族が逮捕されている。

 検察が逮捕状を請求した時点で、韓国の世論やその政治風土から逮捕は免れないと思った。韓国社会には儒教的なものが染み込んでいる。正統性、道徳性が政治力に結び付くため、政争があった場合、敵対者を圧倒する時は容赦のないものとなる。

 こうした正統性や道徳性に対する意識は、麻薬的な効果を発揮する。裁く側も裁かれる側も、もともとは同じ不完全な人間であり、現在の立場がさまざまな力関係によるものだという現実を忘れさせるのだ。

 儒教を全面的には受容しなかった日本人としては、隣国の人々であっても、われわれと同じようには考えないということを知る必要がある。