民進党大会、唐突な「脱原発」の下心を見破る毎、「無責任」と難じた読

◆チグハグな印象漂う

 蓮舫代表を中央に役員らがこぶしを突き上げ、力強く「ガンパロー」を三唱する勇ましい一枚の写真を入れる一方で、「蓮舫氏、崖っぷち党大会」(朝日13日付)の見出しを掲げて党大会の開催を報じた新聞から漂う、何ともチグハグな印象が今の民進党そのもののようである。この12日に、昨年3月の結党から初めてとなる定期党大会を都内のホテルで開いた。蓮舫氏はあいさつで、次期衆院選までに、将来の脱原子力発電をめざすエネルギー政策「原発ゼロ基本法案」を策定する考えを表明した。しかし、これに反発する連合に配慮して当初、目指していた「30年代」から「30年」への目標年次の前倒しは明言しなかった。

 政権交代への決意を強調したあいさつは、原発ゼロ法案や教育無償化、持続可能な社会保障制度などに言及したが、沖縄・尖閣諸島の領海侵入を繰り返すなど膨張政策を強行する中国の脅威や核・弾道ミサイルで挑発を続ける北朝鮮など厳しい外交・安保環境に直面するわが国。その中で日本がどのような対応をしていくのか、喫緊の課題への言及が欠落したのでは、国のトップを目指す人物としての識見、資質が問われよう。大会後には自身の参院議員からの衆院選転出を明言したが、これで「本気で責任ある政権交代を考えているのだろうか?」(小紙14日付・上昇気流)と疑問符が付くのも仕方あるまい。

 昨年9月に「選挙の顔」としての期待を背に登場した蓮舫氏だが、早々に台湾籍と日本国籍のいわゆる「二重国籍」問題で躓(つまず)いた。このため、党勢も低迷したまま。共同通信(11、12両日調査)の政党支持率では9・4%とひとケタで、自民党(43・8%)の4分の1以下と全く振るわないのである。

 冒頭のチグハグな印象はこんなところからきているのだ。

◆気迫の乏しさを叱る

 民進党大会について社説を掲げたのは朝日(13日付)、読売(14日付)、毎日(同)、小紙(同)の4紙(14日現在)である。

 「27日に結党1年を迎えるが、党勢低迷から脱却する兆しは見えない」(読売)、「党勢はいまだ回復していない」(朝日)民進党に、果たして活路はあるのだろうか。

 いち早く社説を掲げた朝日は、不振が続くのは民進党が政府・与党との「明確な対立軸を示せていないため」だと断じた。そこで、蓮舫執行部が党大会で「安倍政権への対立軸に位置付けようとしたのは『脱原発』だった」ことに言及。「いまも世論は原発を使い続けることに否定的だ。朝日新聞の2月の世論調査では再稼働に反対が57%、賛成は29%だった」から、「原発維持の姿勢を崩さない安倍政権に対し、『脱原発』は明確な選択肢になりうる」と説く。

 これに対して、毎日は「安倍政権との対立軸を意識することは大切だが、政策で付け焼き刃の対応をするようでは逆に信頼を失う。このままでは万年野党になってしまう危機感を持つべきだ」と戒める。その上で原発稼働ゼロの目標時期を「2030年代」から「30年」に前倒ししようとした活動方針をめぐる混乱のお粗末に呆れ「野党第1党として、政権を何が何でも目指す気迫が乏しいのではないか」と叱った。

 唐突に持ち出してきた「脱原発」政策について「党の旗印とする狙い自体は理解できる」としても「共産党を含む野党選挙協力の大義名分として飛びついた面もあるのでは」と足元を見る。「『30年』を具体的に裏付ける政策をどこまで議論し、用意していたのか」と、その本気度に迫ったのである。

◆総選挙目当ての下心

 「脱原発」は読売にも「結局、原発再稼働に反対する共産党に足並みをそろえるだけでは」と、総選挙目当ての下心を読まれている。さらに「電力需給や発電コストの見通しを提示せずに原発ゼロ法案を掲げるのは、無責任な対応だ」と批判。「抽象論を唱えるだけでは、支持拡大に結びつくまい」「現実的で説得力を持つ政策を練り上げ,地方組織を地道に拡大する取り組みこそが大切」と説いたのは頷ける。

 小紙は蓮舫氏や野田佳彦幹事長の発言に、国家存立の根幹である安全保障や外交に関する内容の欠落を指摘した。これでは「安心して政権を任せられない」と断じたことにも留意が必要であろう。

(堀本和博)