少年法改正、「18歳」論議は慎重を期せ


 少年法の適用年齢の「20歳未満」から「18歳未満」への引き下げが法制審議会(法相の諮問機関)に諮問された。18歳選挙権導入を受け、有権者であれば責任も果たすべきだとの考えからだが、18歳から「大人」にすることには異論もある。論議は慎重を期す必要がある。

 非行誘発する家庭問題

 罪を犯せば、償わせるために刑罰を科し、再び犯罪を行わないよう更生させる。成人も少年も問わず、これが犯罪者への基本姿勢だ。少年の場合は立ち直りを重視する。それで少年法は写真や実名の報道を禁じ、刑罰は成人より軽くし、少年院などでの更生に努めてきた。

 しかし、残忍な少年凶悪犯罪を踏まえ少年法は何度か改正された。神戸市での14歳少年の連続殺人事件(1997年)などを受け、刑事処分の可能年齢を「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げ、16歳以上による故意の死亡事件は検察官への逆送を原則とするようにした。

 だが、刑罰については長く棚上げにされてきた。大阪府富田林市での17歳少年の高校1年男子バット殴殺事件(2009年)で、大阪地裁堺支部は少年法が定める上限の「懲役5年以上10年以下」の不定期刑を言い渡したが、裁判長はこれを不十分とし、「(少年法の)適切な改正が望まれる」と異例の付言をした。

 こうした指摘を受け14年改正では、上限を「10年以上15年以下」に改め、殺人など成人の無期懲役刑に相当する犯罪については上限を15年から20年に引き上げた。

 しかし、劇物などを使った殺人や殺人未遂の罪に問われている名古屋大の元女子学生(犯行時19歳)は「少年法で守られている間に(犯罪を)やりたい」と述べていた。刑罰には見直す余地がまだありそうだ。

 では、更生はどうか。少年犯罪の再犯者率は高い。刑法犯は06年の30%から徐々に上がり15年は36%、凶悪犯罪は6割の高止まり(警察庁調べ)で、更生の在り方が問われている。18歳選挙権導入を理由に少年法の適用年齢を下げるのは拙速だ。

 責任を問うには責任意識の醸成など環境整備が欠かせない。第一に家族の支援だ。日本弁護士連合会が「非行少年は多くが生育環境などにハンディを抱えている」と指摘するように、育児放棄や虐待など家庭問題が非行を誘発している。家庭教育支援法の制定や憲法に家族条項を盛り込むなどの対応が必要だ。

 第二に道徳教育の強化だ。少年院の教官の多くが非行少年の「規範意識の欠落」を問題視している(06年版『犯罪白書』)。規範意識は家庭で培われ、学校教育で補完される。道徳が18年に教科化されるが、一層の充実策が望まれる。

 第三に有害環境の是正だ。インターネットやDVDなどの有害情報に触発された凶悪事件や性犯罪が多発している。青少年を健全育成するための法整備を進めるべきだ。

 安易に“先行”させるな

 「18歳」の是非は民法の成人年齢はもとより、喫煙・飲酒、銃刀や競馬の馬券購入の禁止年齢など多岐にわたる。少年法だけを安易に“先行”させてはなるまい。慎重に論議すべきだ。