首相真珠湾訪問 「和解の力」で日米同盟強化を
安倍晋三首相はオバマ米大統領と共にハワイの真珠湾を訪れ、75年前の日本軍による真珠湾攻撃の犠牲者を追悼する「アリゾナ記念館」で献花した。
戦後に一つの区切り
1941年12月、日本海軍は真珠湾を奇襲攻撃し、太平洋戦争に突入した。攻撃で米軍は、戦艦アリゾナをはじめ複数の艦船と多数の航空機を失い、約2400人の死者を出した。日本側も60人余りが戦死した。
日本の首相が米大統領とともに真珠湾で犠牲者を慰霊するのは初めて。その後、記念館を望む埠頭(ふとう)で両首脳が並んで演説し、「和解の力」を発信した意義は極めて大きいものがある。今年5月に現職米大統領として初めてオバマ大統領が被爆地・広島を訪問したことと併せ、日米両国は戦後に一つの区切りを付けたと言える。
安倍首相は、日米関係について「歴史にまれな、深く、強く結ばれた同盟国となった」と述べ、昨年4月の米上下両院合同会議演説と同じく「希望の同盟」と位置付けた。戦後、日本の復興を支えた米国の「寛容の心」に感謝を示し、日米を結び付けた「和解の力」を世界が必要としていると力説した。
一方、オバマ大統領は「日米同盟は今日、共通の利害だけでなく共通の価値観に根差し、アジア太平洋の平和と安定を礎石として支え、世界の進歩の原動力となっている」と強調した。日米同盟が「公共財」であることを改めて確認したい。
安倍首相はオバマ政権との間で、同盟強化に力を注ぎ、目に見える成果を挙げてきた。集団的自衛権行使を可能にした安全保障法制の整備、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定などにより、同盟を一段と深化させた。
それも、中国の強引な海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発にストップをかけるためには、アジア太平洋地域に確固たる日米同盟が不可欠だとの信念からにほかならない。中国は強硬な対中発言が目立つトランプ次期米大統領を牽制(けんせい)するため、初めて西太平洋に空母を派遣した。北朝鮮は核実験の回数を重ねるごとに核爆発の威力を高めている。アジア太平洋の情勢は厳しさを増している。
記念館訪問に先立ち、両首脳はオバマ大統領の任期中では最後の会談を行った。両首脳は「日米同盟をさらなる高みに押し上げる」考えで一致した。真珠湾訪問は、首相がオバマ政権と共に進めてきた同盟強化の取り組みの集大成だった。
「和解の力」で緊密化した日米関係は、トランプ次期政権下でも維持・強化されなければならない。年明け1月20日にスタートするトランプ次期政権の外交政策は依然、不透明な部分が多い。
日米同盟をこれまで以上に盤石にするためには、トランプ氏がオバマ政権のアジア重視政策を維持し、アジア太平洋地域に戦略的に関与していくことが求められる。
安定的な関係維持せよ
首相は真珠湾において堅固な日米同盟関係を世界にアピールしたことを、トランプ次期政権との安定的な関係維持につなげるべきだ。