富山政活費不正、公金私物化の蔓延にあきれる


 富山市議会(定数40)での政務活動費(政活費)の不正取得問題では、議長を含む自民党会派7人、民進党系会派2人の計9人が辞職し、公職選挙法の規定により11月6日に補欠選挙が行われる事態となった。

 議長ら市議9人が辞職

 不正受給額は約3300万円に上る。白紙の領収書に金額を書き込む手口で架空請求を繰り返し、飲食やゴルフ、選挙活動などに使ったという。

 政活費は議員報酬とは別に、地方議員の調査研究などに支給される。遊興費や選挙への充当は認められない。公金私物化の蔓延(まんえん)にあきれるばかりだ。

 富山市議会の政活費(議員1人月15万円)は会派を通じて支給される。政活費が不足した場合は、余っている同僚議員から融通してもらうことも慣例化していたようだ。

 今回の問題では、議員が領収書を出した店に不正を明かさないよう口止めをしたり、会派幹部が後輩議員に不正を指示したりした。議員としての資質に欠けていると言わざるを得ない。

 不正が明るみに出たのは、6月に市議会が議員報酬を月額60万円から70万円に増やすことを決めたことが発端だ。増額について取材していた地元紙の記者が自民党議員に押し倒され、取材を妨害された。これが市民の関心を高め、メディアの追及に火が付いた。

 70万円は全国47中核市の中では最高額で、市民からは厳しい反対意見が出ていた。市民の声に真摯(しんし)に耳を傾けない姿勢が、今回の問題の背景にあったとみていい。市議会自民会派は増額を撤回する方針を固めたが、併せて政活費不正取得の再発防止にも力を入れる必要がある。

 政活費をめぐる問題では2014年、号泣会見が話題になった元兵庫県議による詐欺事件が明るみに出た。日帰り出張を繰り返したなどと偽り、913万円をだまし取ったものだ。

 だが、その後も不正は後を絶たず、神戸市議会では不適切な支出を指摘された会派が15年に政活費を返還。宮城県議会でも今年、不正を疑われた議長(当時)が返還し、議長を辞任する事態に発展した。

 今月には、民進党富山県連代表を務める県議が不正を明らかにし議員辞職願を提出。認められない経費に政活費を充てたとされる山形県議も辞職に追い込まれた。

 多くの議会は透明性を高めるため、使い道を明らかにする収支報告書を公開したり、証拠となる領収書の提出を義務付けたりする対策を講じている。しかし、不正防止に効果を挙げているとは言い難い。

 多くの地方議会では、政活費を前払いし、余れば返還する仕組みだ。だが、返還を回避するために領収書偽造などの不正に走るケースが見られる。

 実効性ある防止策を

 一方、政活費の「後払い方式」で不正防止に取り組む地方議会もある。会派に実際に使った費用を報告させ、議会事務局が独自の規則や基準に基づいて審査した上で支払うものだ。

 中には不適切だと判断され、会派に差し戻された請求もあるという。他の地方議会でも実効性ある防止策を講じるべきだ。