都知事候補に櫻井俊、蓮舫各氏が消えない事情を文春・新潮が分析

◆参院選後の注目選挙

 参院選に突入し、「野党統一候補」がどう機能するのかが注目される中、都知事候補がなかなか決まらない。「後出しじゃんけん」が有利といわれ、各陣営が出すタイミングを測っていることもあろうが、「各党とも“いい顔”が見つからず、混迷を極めている」(週刊新潮6月30日号)のが実際のところだ。

 まず週刊文春(6月30日号)を見てみる。都知事選に関してはまだ“特ダネ”がないらしく、「候補9人を『身体検査』!」と名前の挙がっている人物を羅列しただけの記事をトップに持ってきた。

 いの一番に挙げているのが櫻井俊・総務省前事務次官である。タレントグループ「嵐」の櫻井翔の父親だ。「『次はとにかくクリーンで手堅い人を』というのが自民党の総意」(官邸関係者)だそうで、注目され知名度も上がっている櫻井氏が最適というわけだ。

 かつて石原慎太郎氏は「石原軍団」をほしいままに使って、選挙戦を有利に進めた。今のところ出馬する気のない櫻井氏が仮に出るとなると、少なくとも息子は応援に駆け付けるだろうし、「嵐」が登場すれば、選挙権が引き下げられた18歳のみならず、幅広い年齢層に根強いファンを持っていることから、強烈に訴えることができる。

 これに対して、週刊新潮はもう少し詳しい分析をしている。自民党は櫻井氏を「安全パイ」と見ており、「ポスト舛添に求められる3つの条件」を兼ね備えていると評価しているというのだ。第1「女性問題がなく、金銭面がクリーン」であること。第2「最低当選ラインの200万票を集められる知名度」があること。第3「自民党にとって扱いやすく、従順であること」だ。

 「安倍総理が直接乗り出せば、元役人という立場から説得に応じるかもしれません」と「政治部デスク」の見通しを添えている。

◆蓮舫氏には別の解釈

 対する野党で真っ先に名前が挙がったのが蓮舫民進党代表代行だ。「『仲間の声が大事だ』と出馬に含みを持たせ続けた」が、文春はそうして気を持たせることで、自身の参院選を有利に運ぼうとの「売名」目的の可能性もあると指摘する。

 新潮はまた別の解釈をしている。都知事選の告示日は7月14日だ。対して参院選は10日。当選を果たした後に「参院議員を3日間だけ務め、都知事選の告示日ギリギリに、都知事選への出馬を表明することもあり得るのではないか」(政治部デスク)という。もし、本当にそうなれば、政界とは額面通りに受け取ってはならないという見本になるだろう。

 しかも、深い計算まで働いている。同誌によれば、「民進党の2人目の候補、小川敏夫さんは当選圏の6位までに入るのは望み薄。でも、次点に滑り込めば、蓮舫さんが辞めると繰り上げ当選になる」というわけ。同誌は「舛添前都知事以上にセコいと批判を浴びそうではあるものの、やってできない手ではないのである」という。

 週刊新潮の記事は週刊誌らしい“斜め”からの視点で、それなりに面白く読ませる。だが、これらの見方は記事を読む限り「政治部デスク」一人の“分析”だ。お手軽に記事を作っているとの印象を与える。

 それを薄めようとの狙いからなのか、同記事に続けて「私がなったら給与はタダで都知事をやる!」という作家・百田尚樹氏のインタビューを付けた。百田氏は「都知事に立候補しようかと真剣に考えている」とツイートしたところ、読者やファンからだけでなく、メディアからも多くの反響があったとしている。同誌の取材もツイートに反応したものだろう。本人の意思はまだ何も固まっていない。

◆隠れ候補掘り起こせ

 文春は他に橋下徹、小池百合子、宇都宮健児、丸川珠代、長島昭久、川淵三郎、鈴木大地の各氏を並べた。新潮はここに挙がっていないもう一人の人物を出した。元鳥取県知事の片山善博氏である。民進党が独自候補として「手を伸ばしている」一人だという。

 「後出しじゃんけん」は「蓮舫だけがやれる」と新潮はいうが、それを狙っている隠れた候補がいるかもしれない。各誌にはそれを掘り起こしてくることを期待したい。

(岩崎 哲)