自民党大会、「民共合作」批判を深めよ


 夏の参院選前の総決起集会とも言える自民党定期大会が開催された。安倍晋三首相は「自民・公明対民主・共産の勢力との戦いになる」と位置付け、勝利に向けて結束を呼び掛けた。

 しかし、本気で戦闘モードに入るのであればもっと鋭い「民共合作」批判をすべきである。首相が「歴史的使命」と自覚する憲法改正に触れなかったのも反省すべき点だ。

 改憲に意気込み示せ

 首相が強調したのは、昨年成立させた安全保障関連法の意義だった。この安保法を民主党が、自衛隊解散・日米安保条約廃棄を党是とする共産党と手を組んで廃止すれば、日米同盟の絆は大きく損なわれると指摘。「損なわれた後、抑止力が大切だとは知らなかったと言っても後の祭りだ」というのはもっともである。国民の生命と財産を守るのは政府の最大の責務だからである。

 そういう政党同士の連携の「民共合作」は野合であり、「選挙のためなら、誰とでも組む無責任な勢力に負けるわけにはいかない」というのも理解できる。ただ、その「合作」批判をする際、首相がさらに切り込むべきことがある。

 共産党が「1人区での独自候補の取り下げ」をしてまで民主党に選挙協力することに踏み切った背景は何か。その協力関係を衆院選にまで広げると表明した狙いは何か。もし、「合作」が成功すると共産党の戦術がどう進むのか。「民主連合政府」の樹立という目標を持つ革命政党・共産党の怖さも併せて今後、国民に分かりやすく訴えるべきであると考える。

 首相が「在任中に成し遂げたい」と国会で表明した憲法改正について全く触れなかったのも問題だろう。参院選では「争点にする」と語っておきながら、全国の幹部たちが結集した党大会で意気込みを示さなかった。改憲を争点化して参院選で大勝しなければ、スケジュール面でも困難になろう。

 谷垣禎一幹事長による党務報告でも「憲法改正推進本部の活動」について「都道府県連や選挙区支部主催の改憲研修会を開催」していることなどが紹介されたが、うねりが起きるような国民運動にしようとする熱気が伝わってこない。運動方針で「国民的な議論と理解を深め、国会で正々堂々と議論する」と確認したが、首相はその先頭に立ってもらいたい。

 政権の看板政策「アベノミクス」が破綻したとする野党の批判に対して首相は、具体的な数字を示して反論。TPP合意に対する農家の懸念の払拭(ふっしょく)や地方創生による外国人観光客の増加と購買力への期待、東日本大震災からの復興への決意などには力がこもっていた。経済再生の切り札とも言える諸政策には躊躇(ちゅうちょ)なく取り組むべきだ。

 改革の柱を見失うな

 教育再生についても言及がなかったのは残念だった。運動方針は「新たな挑戦、躍動する日本へ」としているが、その原点は「教育」にあるはずだ。教育格差の解消や超スマート社会の実現などには触れているが、道徳教育の重要性は欠落している。安倍改革の柱を見失ってはならない。